マックがコロナ禍でも好調なのは大手ファストフードだから? 公式アプリ「6600万ダウンロード」の本質:飲食店を科学する(4/4 ページ)
マクドナルドの業績は好調だった。その理由は持ち帰りに適した業態だったからなのだろうか。筆者は他を圧倒する公式アプリのダウンロード数に注目する。
下町の焼肉店がWebマーケティングを駆使してコロナ禍でも前年越えを達成
今回ご紹介させて頂くのは、当社のコンサルティング先であり、東京都江戸川区などの下町で人気の黒毛和牛焼肉店「うしくろ」さんです。
うしくろでは、以前からデジタルアドレスの獲得にかなり力を入れてきた結果、メールアドレスを1万件、LINE会員数は7000件を保有しています。
具体的には、店舗に来店されたお客さまからデジタルアドレスを頂くことをスタッフの「KPI=目標指標」に掲げ、毎日結果を全店で共有。デジタルアドレスの獲得が上手にできていない店舗に関しては、マネジャーが直接店長さんやスタッフにロールプレイング研修を行っています。
東京都の緊急事態宣言が発令された直後には、当社と一緒に戦略会議や商品開発会議を繰り返し、メールマガジンやLINE配信などをフル活用していち早くお弁当の販売開始を告知しました。すると「なじみ客」の方々からお弁当のオーダーが続々と入り、5月度は6店舗で2500万円ものお弁当を販売できました。
こだわりの黒毛和牛を1枚1枚丁寧に焼いて仕上げるお弁当の評判は、地元の方を中心に口コミで広まり、今まで利用したことが無かった新規のお客さまも数多くお弁当を購入するために店舗を訪れました。
数多くのなじみ客に対してWebマーケティング(オンライン)を実施したことで、結果的になじみ客からの口コミ(オフライン)による新規客獲得ができました。私は地域密着型の店舗においては、こうした「オンラインtoオフライン戦略」(Webマーケティングをきっかけに口コミ来店などに発展していく)や、逆に「オフラインtoオンライン戦略」(チラシなどのアナログマーケティングを通じて店舗のサイトやSNSといったWebマーケティングツールにアクセスする)が重要になると考えています。
さらに、初めてうしくろのお弁当を食べた地域のお客さまが、「お弁当がおいしいからお店の料理もきっとおいしいはず」と考え、緊急事態宣言解除後に多数来店されました。冒頭で述べたように、日本全国の繁華街型の飲食店が苦戦する中でも、うしくろは前年の売り上げを超えるまでV字回復ができました。
現在、うしくろはアフターコロナの市場環境を見据え、これからの半年、そして1年を通じたWebマーケティングの計画書(デジタル年間MD計画書)を作成しています。そして、準備のために配信時期、ターゲット、コンテンツ(配信内容)を定めています。
コンテンツ(配信内容)に関してはどう考えるべきでしょうか。アフターコロナにおける消費者のマインド調査データでは、「家では食べられないもの」などが来店動機の上位に入っています。そうした意味でも、自店舗でしか食べられないもの、自店舗でしか体験できないこと(サービス)などをしっかりと伝えていく活動、すなわちコンテンツマーケティングが重要となります。アフターコロナに伴う経済不安があるため、「安さ」というキーワードは重要ですが、それだけでは競合店に埋もれてしまいます。
第2波や秋の感染再拡大などが懸念されています。今からでも遅くありませんので、ぜひ皆さまのお店でも「顧客情報の獲得」と「Webマーケティング」に力を入れ、繰り返す経営危機に備えて頂ければと思います。
少しでも皆さまのご参考になれば幸いです。最後までお読み頂きありがとうございました。
著者プロフィール
三ツ井創太郎
株式会社スリーウェルマネジメント代表。数多くのテレビでのコメンテーターや新聞、雑誌等への執筆も手掛ける飲食店専門のコンサルタント。大学卒業と同時に東京の飲食企業にて料理長や店長などを歴任後、業態開発、FC本部構築などを10年以上経験。その後、東証一部上場のコンサルティング会社である株式会社船井総研に入社。飲食部門のチームリーダーとして中小企業から大手上場外食チェーンまで幅広いクライアントに対して経営支援を行う。2016年に飲食店に特化したコンサルティング会社である株式会社スリーウェルマネジメント設立。代表コンサルタントとして日本全国の飲食企業に経営支援を行う傍ら、日本フードビジネス経営協会の理事長として店長、幹部育成なども行っている。著書の「飲食店経営“人の問題”を解決する33の法則(DOBOOK)」はアマゾン外食本ランキングの1位を獲得。
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