アブラムシにはてんとう虫、ドイツの「生物農薬」事情:生物農薬もネット通販で購入可能(3/4 ページ)
ロックダウンで、園芸用土の売れ行きが増加したのはドイツも同様だ。今回はてんとう虫を例に、ドイツでの生物農薬事情をお伝えする。しかし例え農薬としてであっても、在来でない生物を持ち込むことは、生態系の破壊に繋がりかねない点を忘れてはならない。
生物農薬は、化学農薬を使わないための試み
ドイツのこういった生物農薬の販売ビジネスは、言うまでもなく化学農薬を使うことへの抵抗感から発生している。例えば、化学農薬を使うことで、作物の受粉に大きな役割を果たす蜂の生育に大きな影響が出てしまう。てんとう虫をインターネット経由で購入した永井さんも、化学農薬を使いたくなかったと語る。
永井さん 「アブラムシを退治するのに薬品を使うと、そこに住む他の虫に影響が出ることもあります。果樹や野菜などを植えた庭では、雨で薬品や化学肥料が地面に落ち地下水で拡散するリスクもあるので使いたくないですね。
自然の法則に大きく反するものは、大きく悪い副作用を必ず発生させ、巡り巡って自分にその反動が返ってくると思っています。化学農薬の使用もそうですが、例えば、見た目がきれいなだけで、蜂や蝶の生存にはほとんど意味のない花を庭に植栽することも、蜂の数を減少させる一つの原因になっています。
蜂の減少は、ドイツ国内でも果実農家の生産量に影響を及ぼします。また綿は、人手による自家受粉も可能なのですが、虫が受粉することで60パーセント以上も収穫量が上がるそうです。発展途上国では、蜂の減少で綿の収穫量が落ち、さらなる貧困が発生していると聞きます」
ちょうど本記事の作成中、ラジオ番組「安住くんの日曜の天国」で、日本でもてんとう虫が生物農薬として利用されていると紹介していた。生物農薬のてんとう虫が飛び去ってしまうのを防ぐために、以前はあまり飛ばない個体をかけ合わせていたという。
しかし現在、千葉県立農業大学では、てんとう虫の羽を開かないようにする特殊接着剤を開発して販売している(参考記事)。このように、永井さんの悩みと同じく、繁殖目的からか気まぐれに、てんとう虫を農地から飛び去らせないための試行錯誤が続いている。
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