インバウンドは「ゼロ」想定… 赤字相次ぐ百貨店大手、“休業2カ月”の穴は埋まるか:三越伊勢丹HDは600億円の赤字予想(2/2 ページ)
百貨店大手の第1四半期決算では、新型コロナ感染拡大に伴う店舗休業の影響が大きく、赤字の計上が相次いだ。営業再開後も消費動向を見通しづらい情勢となっている。2020年度の見通しでは、三越伊勢丹HDなどがインバウンドの売り上げをゼロと想定している。
4〜5月は7割前後のマイナス、百貨店の売り上げ推移
緊急事態宣言が出された4月以降、百貨店の売り上げはどのように推移したのか。各社の月次売り上げ状況をみると、多くの店舗で臨時休業や食品売り場のみの営業となった4月は、三越伊勢丹HDの国内百貨店全体の売り上げが前年同月比79.2%減、高島屋(国内百貨店子会社を含む)は74.7%減、J.フロント傘下の大丸松坂屋百貨店も79.0%減。さらに5月も、三越伊勢丹HDは75.8%減、高島屋は63.0%減、J.フロントも73.2%減と、4〜5月は前年と比べて7割前後の大幅な落ち込みが続いた。
店舗営業を本格的に再開した6月になると、回復の兆しも見られるようになった。三越伊勢丹HDは21.6%減、高島屋は16.8%減、J.フロントは29.0%減となり、5月と比べてマイナス幅は縮小。しかし、依然として前年を大きく下回っている。
さらに深刻なのがインバウンド関連の落ち込みだ。外国人観光客数の回復は当面見込めない。6月も百貨店の免税売上高は回復しておらず、高島屋は94.2%減、大丸松坂屋百貨店は97.1%減と非常に低い水準となっている。外国人観光客の来店が多かった都市部の店舗を中心に、「免税売上の大幅マイナスが売上減の大きな要因」(三越伊勢丹HD)となっている。
今期のインバウンドは「ゼロ」を想定
20年度の通期業績予想については、各社によって対応が分かれた。高島屋は第1四半期決算を発表した7月上旬の時点で、引き続き「未定」としている。一方、J.フロント リテイリングは期初から出していた予想を下方修正。21年2月期の純損益は、黒字予想から一転して260億円の赤字の見通しとした。下方修正の理由は「想定以上の店舗休業期間継続と売上回復の遅れを考慮」(同社)したからだという。また、インバウンドの売り上げは「年間ゼロ」を想定している。
三越伊勢丹HDは、期初に未定としていた通期業績予想を開示。21年3月期の売上高は前期比26.5%減の8230億円、純損益は600億円の赤字の見通しとしている。20年3月期に純損益が赤字に転落しており、今期の赤字幅は前期の111億円から大幅に拡大する見込みだ。
今期の百貨店の売上高については、7月の日本人による売上高が平常時の85%で推移したことから、8月以降も伸びを見込まず、第2四半期以降を85%で試算した。そして、J.フロント リテイリングと同様に、訪日外国人による売り上げは「年度内ゼロ」の想定で業績予想を作っている。
各社とも厳しい事業環境が続きそうだが、6月の実績を見ると、食料品やインテリア用品など、家で豊かに過ごすニーズの受け皿となる商品に回復の兆しがあったり、オンラインショップが好調だったりと、今後につながる変化もみられる。従来の店舗運営だけではなく、変化するニーズに対応できる取り組みが需要回復後に向けて求められる。
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