ブロックチェーンを活かす法体系とは?:ブロックチェーンは「デジタル公証役場」(5/5 ページ)
ブロックチェーンを使いこなすことを考えたとき、課題は技術面だけではなく、法律面にある。ブロックチェーンを公証役場的な保証の仕組みをデジタルに構築できるものと捉えた場合、現在の法体系にはどんな課題があるのか。JBA(日本ブロックチェーン協会)理事の福島良典氏(LayerX CEO)による寄稿。
デジタルフレンドリーな法により、経済の粒度が小さくなり、SMBや個人をエンパワーする
最後に、じゃあデジタル公証役場ができるとどんな可能性が広がるか? について論じてみようと思います。
すでに世の中で出始めているように「金融アクセスの民主化」が起こると思います。現状の金融は一定のアセットサイズがないと金融サービスにアクセスしても意味がない、コストが合わないというものが多くあります。
それ故に金融商品化されていないアセットが、低コスト、粒度が小さくなることで金融商品化可能になるものが多くあります。アートやワイン、スニーカーといったものも将来は金融商品として誰もがアクセスできるようになるかもしれません。
また現在は、株式や通貨などは転々流通しています。一方、それ以外の「約束」の転々流通はなかなか進んでいません。
その中でも直近進捗しているのは、請求書の買い取り(ファクタリング)です。前述のように、請求書の信頼性があがるとファクタリングもしやすくなります。一説によるとかなり高いとされているファクタリング手数料も多くは請求詐欺や支払先がデフォルトするリスクなど信用コストを背負っています。そこのコストが劇的に下がり、資金調達に柔軟性が生まれる可能性があります。
また現在は契約書を買い取るみたいな概念はありませんが、契約書の信頼性も上がると、POファイナンスならぬ、POファクタリングみたいなものも登場するかもしれません(※PO=発注書)。
未だ紙で管理されている貿易ファイナンス、いままでデータが見えないことで資金繰りに苦しんでいたサプライヤーによるサプライチェーンファイナンスなども活発化するでしょう。
このようにデジタル技術がより低コストで、粒度の小さい手段を提供する時、利益を得るのはより小さな個人やSMBです。
インターネットの歴史でも TV・新聞 → ポータル → 検索エンジン → SNSとより個人がエンパワーされる方に進化しました。これが「デジタル約束」の世界でも進むでしょう。
一方インターネットと「デジタル約束」の違いは、法体系にあります。
情報発信や情報の選択はインターネット以前も特に規制がなく自由なものでした。一方「約束・価値」に関する法規制は「物理立ち会い」を原則としているものがまだ多く、せっかく技術でより安全・安価な仕組みを作っても最後は「物理立ち会い」が必要な法体系になってしまっています。
これでは非常にもったいない。
JBA(日本ブロックチェーン協会)ではブロックチェーンでの技術はもちろん「ブロックチェーンを国家戦略に」を合言葉のもと、より利便性の高い、社会効用の高い国にしていくために、デジタルフレンドリーな法体系を推進できるような活動もしていきたいと思っています。
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