ブロックチェーンを活かす法体系とは?:ブロックチェーンは「デジタル公証役場」(4/5 ページ)
ブロックチェーンを使いこなすことを考えたとき、課題は技術面だけではなく、法律面にある。ブロックチェーンを公証役場的な保証の仕組みをデジタルに構築できるものと捉えた場合、現在の法体系にはどんな課題があるのか。JBA(日本ブロックチェーン協会)理事の福島良典氏(LayerX CEO)による寄稿。
(思考実験)電子帳簿保存法におけるブロックチェーンに合わせた法体系
また今年、電子帳簿保存法が改正されます。これにより会計ソフト上のデータをたしかなデータとすることで、請求書を紙の原本で保存しなくて良くなるというものです。
COVID-19の流行から日本でも急速に紙をなくそうという動きが出てきています。是非これを機に進んでほしいと考えています。
私が経営しているLayerXでも「電子帳簿保存法」への対応をすすめていますが、これがなかなかめんどくさかったりします。
より規模の小さい会社、CFOがいない会社、上記のような会計ソフトを入れていないような会社はずっと紙を使いつづけないといけないのでしょうか?
素朴に、じゃあなぜ請求書の紙を残したいのか。その多くの理由は「確かにその約束(=請求書もお金を支払うという約束を記したものです)が、この日付で行われた」ことを保証したいからではないでしょうか?
であれば「ブロックチェーン上にある、この規格にのっとった請求書は元本データとして正当である」という法体系にすれば、上記の問題は一気に解決するかもしれません。
そうなったときにあえて請求書をローカルのDB(データベース)に保存せず、ブロックチェーン上のストレージに保存しようとするでしょう。その時「why blockchain?」という問いはそもそも生まれないと思います。
なので結局「why blockchain?」という問いは、ブロックチェーン技術でできるようになった(ブロックチェーンというと反感を買いやすいので、ここを暗号技術、デジタル技術と変換してもらっても構いません)あたらしい価値担保の仕組みと法体系のズレの部分がかなり大きのではと感じています。
ソフトランディングを
もちろん既存の法体系、仕組みにも一定の合理性があります。そこを否定しては何も進みません。なのでリアルな公証役場とデジタルな公証役場をユーザーが、企業が選べるようにしていく。またデジタルに移行していった時、たとえばブロックチェーンのノードを既存の公証役場で持ち、デジタル移行しても一定の利益を受けられる、パイが広がることで今以上の収益を得られる可能性があるということを示していくことが重要かと考えています。
私の政治思想としては、アナログ/デジタルの0/1で考えるのではなく、ユーザーや企業の「選択」にゆだねる、彼らがある一方を選んだときに有利不利とならないようなインセンティブ設計にする。そしてアナログ/デジタル双方にアクセスできて、今の仕組みが生んでいる雇用も急激に壊さないようなインセンティブ設計をしていくことが重要かと思っています。
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