ブロックチェーンを活かす法体系とは?:ブロックチェーンは「デジタル公証役場」(3/5 ページ)
ブロックチェーンを使いこなすことを考えたとき、課題は技術面だけではなく、法律面にある。ブロックチェーンを公証役場的な保証の仕組みをデジタルに構築できるものと捉えた場合、現在の法体系にはどんな課題があるのか。JBA(日本ブロックチェーン協会)理事の福島良典氏(LayerX CEO)による寄稿。
ブロックチェーンと法の歪み 電子記録移転権利の第三者対抗要件問題
今年、ブロックチェーン上で発行した有価証券が法的な権利を持つという金商法改正がなされました。俗に言う、STOが合法的に行えるようになったという変化です。しかし、実はこの法律かなりの矛盾を抱えています。それが先ほど説明した「第三者対抗要件」の問題です。
それに関しては、(おそらく日本で唯一?)この問題提起をしている弁護士の増島先生の記事が非常にわかりやすいので詳しくはここを見てください。
上記記事の一部引用です。
民法の指名債権譲渡のルールによると、債権は、売買当事者間では当事者間の合意のみで取引できるものの、その譲渡を債務者に主張するためには債務者への通知か債務者の承諾があることが必要です。さらにその譲渡を二重譲渡先や差押債権者、管財人といった第三者に主張するためには、上記の通知か承諾について公証役場で発行される確定日付をとってくることが必要です。そして、この確定日付は電子化されておらず紙でしかとることができないことになっています。その結果、匿名組合の持分を対世的に譲渡するためにはデジタルでは完結しないと考えられており、これにより、ブロックチェーン上に記録された匿名組合持分の残高や権利者に関する情報は、法律上の匿名組合持分の残高や権利者とずれてしまうことが起こりうることになります。
僕なりに解説すると、金商法では、たしかにブロックチェーン上で譲渡された債権(たとえば株式)はブロックチェーン上の仕組みで「確かにその約束が、この日付で行われた」ことを保証し、ブロックチェーン上でその株式を持ってる人を法的にも権利者としようという趣旨の法律です。
一方、確定日付は民法で定められており、そこでいくと、せっかく非対面で電子的に移転した権利に対して「第三者対抗要件」をみたそうとするとわざわざ物理で公証役場に行き、立ち会ってもらわないといけません。(なんか不思議ですね)
めんどくさいだけでなく、この権利者の二重性みたいな隙を突く詐欺も発生するかもしれません。
本来デジタル(非対面)で、効率的に「確かにその約束が、この日付で行われた」ことを保証する技術がブロックチェーンです。しかし、法の歪(ゆが)みにより、このメリットが失われます。
たしかにこの状態だとなぜブロックチェーンを使うの? となっても仕方ありません。
余談ですが、増島先生が書いているように、法解釈によってここをさけられる可能性はあります。弊社(LayerX)でもそういった路線で現実的に進めようとしていますので実際こういうことがおこらないような努力をしています(のでご安心ください)。しかしその努力にもコストもかかりますし、ノウハウも必要なので、思わぬ参入障壁を作ってしまいます。本来の趣旨からするとここが一貫した法体系になっていると競争が促進され、最終便益が高まる方向にいくことが理想と思います。
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