「しゃぶしゃぶ温野菜」爆発 なぜ報ステは「運営会社」を伏せたのか:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
「しゃぶしゃぶ温野菜 郡山新さくら通り店」でガス爆発が起きた。多くのメディアは謝罪会見を取り上げたが、なぜか報道ステーションは運営会社の社名すら報じなかった。その背景になにがあるのか。
報じ方が叩かれる時代
では、なぜ一部のマスコミは「ラブホテル」という事実を伏せたのかというと、ラブホテル業界から多額の広告マネーが流れ込んでいるので忖度(そんたく)したから……などではなく彼らなりの「正義」のためだ。
亡くなった方や被害者の中には、ラブホテルに行っていたことを隠していたい人たちもいる。不倫カップルなどの場合はなおさらだ。そういう二次被害を踏まえると、「上」はどう判断をするのか。「ラブホテル」という名称を使うことにストップをかけるしかない。
報ステで「コロワイド」「レインズ」という企業名を出すことにストップをかけた人も、基本的にはこれと同じ考え方がベースにあったのではないか。
コロワイドとレインズの社名を出して、しゃぶしゃぶ温野菜のブランド全体を叩いたようになってしまうと、もし両社になんの瑕疵(かし)もなかったと分かった際に「やりすぎだった」という批判を受けるかもしれない。そこで「上」としては、そのような事態を避ける安全策として、確実に当事者である加盟社だけを報じろと現場に命じたのではないか。
つまり、今のマスコミは「弱者保護」や「中立公正」という言葉に神経を尖らせるあまり、事実を歪めて報じるという、本末転倒なことになっているのだ。
ちょっと前までは、不祥事が起きると「誠意がこもっていない」「謝罪が遅い」などと企業の対応が叩かれた。しかし、もはや「なんでそんな奥歯にものがつまった言い方しかできないんだ」「なんであっちの名前を出して、こっちは伏せるのだ」なんて感じで、マスコミの報じ方が叩かれる時代になっているのかもしれない。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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