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台頭する“グレー”クレーマーの生態 悪質な苦情にどう対処すべきか世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

インターネットの普及で企業のクレーム対応は難しくなっている。最近は反社会的勢力による被害が減る一方、一般の消費者が迷惑行為をしてしまう“グレー”なクレームが増えた。どう対処すればいいのか。法律や対処後のフォローを念頭に置いた対応が効果的だ。

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日本のカスタマーサービスは優れている

 ただ日本の場合、客は「神様」で、つまり人間以上の存在という価値観が根強い。海外では日本のような丁寧なカスタマーサポートはあまりないが、海外でクレームをしなければいけない際には、筆者もどうしても日本と比べてしまう。

 日本のカスタマーサービスはすでに優れていると思うが、新たに出現しているグレークレームにもきちんと対応していこうとする姿勢もまた日本らしいと言えよう。桐生氏によれば、「日本における丁寧な応対は、製品・サービスを含めた企業全体のイメージを高める要因となっています。そして、その応対の背景には、顧客応対業務を『お客さまと企業の重要な接点』と捉える経営方針が関係していると考えられます。ただ、国際化の波を受け社会は変化し始めており、これまでの日本的な精神性や価値観だけでは消費行動も捉えにくくなっています。企業側も、ただ受け身的に対応するのではなく、消費者を育てていく発想をもって、グレークレームに向かい合うことが必要と考えます」という。

 最近は、ネット上の評判やSNSなどでの言及も、客を引きつけたり、遠ざけたりする。冒頭で触れた「SNSをチラつかせて脅しをかける消費者」も、実は脅迫や業務妨害などによる法的措置も可能で、企業側が過剰に反応する必要もないという。

 とはいえ、商売人やビジネスパーソンにとっても非常に手間のかかる難しい時代になった。クレームする側も、ネットで文句を言う人たちも、自分が知らぬ間にたちが悪い悪質なクレーマー、つまりグレーなクレーマーになっているかもしれないことを自覚すべきかもしれない。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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