販売員はモニターの中 ビックカメラが“遠隔接客”に手応えを感じている理由:アフターコロナ 仕事はこう変わる(1/3 ページ)
ビックカメラが7月から一部店舗で“遠隔接客”を試験的に実施している。コロナ禍で非対面・非接触での説明を受けたいというニーズがあると考えた。一定の成果が出たことから今後も継続・拡大していく。
アフターコロナ 仕事はこう変わる:
新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、業務の進め方を見直す企業が増えている。営業、在宅勤務、出張の是非、新たなITツール活用――先進的な取り組みや試行錯誤をしている企業の事例から、仕事のミライを考えていく。
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ビックカメラは7月4日から一部店舗で“遠隔接客”を試験的に実施している。店舗とは別の場所にいる販売員が、売り場のモニターを通して来店したお客に商品説明などをリアルタイムで実施する。一定の効果があったことから、「今後の展開については前向きに検討したい」(広報担当者)という。どのような仕組みなのだろうか。
“遠隔接客”はどんな感じ?
「この掃除機を実際に持ってみてください」
「軽いですね」
「ありがとうございます。今、どのような掃除機をお探しですか?」
ここはビックカメラ有楽町店(東京都千代田区)。売り場には40インチ近いモニターが設置されており、女性の姿が映し出されている。モニターの前にはダイソン製の掃除機が並べられており、通りかかったお客に対して販売員が声をかけている。
販売員がお客の要望を一通り聞きだした後、画面が切り替わり、ダイソンが取り扱っている掃除機の一覧表が映し出された。販売員は「お客さまのご要望に合うのはこのあたりかと思われます」と説明しながら、赤いマーカーで書きこんでいく。また、商品の性能をアピールするため、あらかじめ用意しておいた動画を再生したり、実際に商品を手に取って特徴を解説したりしていた。
ある程度“脈”がありそうだと判断されたのか、店内にいる“リアル”販売員がモニター前にいるお客に近づいてきた。そして、実際の性能を体感してもらうため、売り場へと誘導していった。
お客がいなくなると、モニターの中にいる販売員はお客の興味を引くために商品紹介をしたり、タイムセールを実施していることをアピールしたりしていた。モニターの横にはもう一人の販売員がおり、まるで通販番組で展開されるようなやりとりをすることもある。
販売員の休憩時間になると、自動的に商品のデモ画面に切り替わる仕組みになっている。モニターの横には購入カードが置いてあり、説明の内容に納得したらレジに持って行ってそのまま商品を買うこともできる。
ビックカメラ有楽町店は都心部の大型店であり、休日ということもあってか売り場の前を通る客の数も多い。遠隔で接客するスタッフは「有人スタッフの補助」「売り場の盛り上げ要員」という位置付けのように見受けられた。
有楽町店にこのサービスを7月に試験的に導入した結果、1日平均で20人程度の接客をこなした。また、掃除機を1日平均3台販売できたという。この結果を踏まえ、ダイソンは8月以降も遠隔接客を続行するとともに、展開する店舗数を増やすことにしたという。
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