販売員はモニターの中 ビックカメラが“遠隔接客”に手応えを感じている理由:アフターコロナ 仕事はこう変わる(2/3 ページ)
ビックカメラが7月から一部店舗で“遠隔接客”を試験的に実施している。コロナ禍で非対面・非接触での説明を受けたいというニーズがあると考えた。一定の成果が出たことから今後も継続・拡大していく。
遠隔接客の仕組みとは?
冒頭で紹介したサービスの名称は「えんかくさん」。販売イベントや見本市運営などを手掛けるベストプロジェクト(大阪市)が提供している。同社はこのサービスを複数のビックカメラが運営する店舗で展開し、ダイソンの掃除機をお客にアピールしている。
ビックカメラとダイソンは、コロナ禍では非対面・非接触での説明を受けたいというニーズがあると考え、遠隔接客の実施をベストプロジェクトに依頼した。ビックカメラにとっては、初めての試みだったという。また、競合であるノジマやヨドバシカメラの広報担当者は、こういった遠隔接客をこれまで行ったことはないと説明する。対面での接客が基本の大手家電量販店では、珍しい取り組みといえるだろう。
えんかくさんの基本的な仕組みはこうだ。「テレショッパー」と呼ばれる販売員が、複数の店舗の状況を同時にモニタリング。各店舗にはモニターや商品が設置されており、立ち止まったお客に販売員は声をかける。また、商品の情報をお客が知りたいと思ったら、モニターの前に設置されているボタンを押すことで、販売員を呼び出せる。販売員は資料や動画を駆使しながら、画面越しに接客を行う。
このサービスを利用するメリットは何か。店舗側や販売員のいるスタジオ側に必要な機材(PC、モニター、呼出しスイッチなど)を設置する初期コストや販売員の人件費、システム利用料といったランニングコストの組み合わせによっては、店舗側は1日当たりの人件費を削減できる可能性がある。店舗によっては、接客をしない手持ち無沙汰な時間が発生していることがあるからだ。
また、スキルの高い販売員の“接客力”を一度に複数の店舗で活用できる可能性もある。現在、販売員は都内のスタジオから接客しているが、将来的には自宅での勤務も想定しているという。
ベストプロジェクトの上野山沢也社長は、このサービスを考案した背景について次のように語る。
「もともと、コロナとは関係なくこのサービスの準備を進めてきました。これまでは、体調が悪いという理由で販売員が店舗に来れなくなり、代役を急きょ用意しなければいけないこともありました。また、販売員の数が足りないという問題意識もありました。こういった課題を解決するためには『画面越しに接客すればいいのではないか』と考えたのです」
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、店舗でのサービスに非接触が求められるようになった。また、お客が画面越しに販売員と会話をすることに違和感を抱かなくなったことも、このサービスが一定の効果を出している理由だと上野山社長は考えている。
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