まだまだ世界で人気? いまだに「FAX」を使い続けるワケ:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
新型コロナに関する保健所の対応で注目されたのが、今でもファクスを使っている実態だ。しかし、米国や欧州でもまだまだ現役で使われている。コストやビジネス文化などの理由でファクスが使いやすいという声も根強い。まだしばらく、なくなることはなさそうだ。
デジタルと組み合わせたサービスも
『ファクス:ファクス機器の盛衰』の著作がある米テキサスA&M大学のジョナサン・クーパースミス歴史学教授は、いまだにファクスが使われている理由を「利用者たちは変化に抵抗する。小規模な企業なら書類を交換するのに新しいテクノロジーを試してみようと思ったり、それにお金をかけたりする理由はない。ファクスを好む全ての企業は、注文などでやりとりが混乱しないように全ての顧客や納入業者にファクスを使うよう求めることになる」と、メディアに語っている。そうしてファクスは生き残る、と。
ここまでファクスの現状を見てきたが、少し前からは、デジタル文書をファクスで送信するというハイブリッドな通信も普及し始めている。つまりファイル自体はPDFなどのデジタル文書だが、それをファクスとして送信できるというものだ。今、クラウド型のファクス送信サービスなどを提供している企業もある。このサービスでは、紙とデジタルのどちらにも対応できる。半分ファクスで、半分デジタル、という感じだ。
つまり現在はファクスから電子メールに移りゆく、ちょうど過渡期にあると考えられる。ただファクスの状況を見ていくと、おそらく世代交代とともに消えていく運命にある。だがまだしばらく、なくなることはなさそうだ。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
関連記事
- スーツ姿のビジネスマンが「時代遅れ」になる日
米金融大手ゴールドマン・サックスが社内のドレスコードを緩めると発表した。米国企業では、職場の服装がカジュアル化しつつある。ビジネススーツが「過去の産物」となる日も遠くないかもしれない。 - “世界で最も心地よい”スニーカーは、日本でも爆売れするか
「世界で最も心地よいシューズ」と評されたスニーカーブランド「オールバーズ」が日本初上陸した。環境への配慮や履き心地を追求したシューズが、なぜここまで評価されているのか。その背景には、明確なビジネス戦略があった。 - 禁止か買収か TikTokがトランプの目の敵にされる「4つの理由」
人気アプリ「TikTok」を巡って、米中の混乱がさらに深まっている。なぜ米政府はTikTokの禁止や買収に言及しているのか。トランプ大統領がこのアプリを禁止したい理由は4つある。TikTokに逃げ道は残されておらず、こういった締め付けは今後も続く可能性が高い。 - “テレワーク急増”が弱点に? 新型コロナで勢いづくハッカー集団の危険な手口
新型コロナウイルス感染拡大で世界が混乱する中、それに便乗したサイバー攻撃が激増している。中国やロシアなどのハッカー集団が暗躍し、「弱み」につけ込もうと大量の偽メールをばらまいている。新型コロナに関する情報と見せかけたメールには注意が必要だ。 - 台頭する“グレー”クレーマーの生態 悪質な苦情にどう対処すべきか
インターネットの普及で企業のクレーム対応は難しくなっている。最近は反社会的勢力による被害が減る一方、一般の消費者が迷惑行為をしてしまう“グレー”なクレームが増えた。どう対処すればいいのか。法律や対処後のフォローを念頭に置いた対応が効果的だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.