まだまだ世界で人気? いまだに「FAX」を使い続けるワケ:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
新型コロナに関する保健所の対応で注目されたのが、今でもファクスを使っている実態だ。しかし、米国や欧州でもまだまだ現役で使われている。コストやビジネス文化などの理由でファクスが使いやすいという声も根強い。まだしばらく、なくなることはなさそうだ。
なぜ、ファクスを使い続けるのか
また、ファクスを使うのにはこんな理由もある。日本の場合、中小企業などではコストの問題がある。PCでやりとりをするには、それなりのPCやスキャナーなどを導入する必要がある。さらに昨今ではサイバー攻撃による情報漏洩なども問題になっており、セキュリティソフトを導入したり、セキュリティ企業と契約したりする必要もある。そんな余裕がある企業ならいいが、そこまで手が回らないという企業も多いだろう。
さらに日本独特の理由としては、手書き文化がある。手紙でお礼を書くことが丁寧とされる文化が日本にはあるが、それも無関係とはいえず、デジタル文書だけでは味気ないと感じる人もいるだろう。その点、ファクスなら手書きで気楽に送信ができてしまい、日本人には使いやすい。
また電子メールで添付された電子ファイルの信頼度という問題もある。米国では、最初にファクスが普及した頃も、サインしてファクスで送られる文書が法的に有効かどうかが議論になった。1990年代ごろにやっと、政府などでも公式にファクスの文書を受け入れるようになっている。
電子メールの場合は、2000年に電子署名法が作られ、電子署名が法的に有効であると示されている。だが、それでもまだファクスを信頼する人が多く、電子署名などは安心できないという人たちも多いのが実態だ。例えば、米国ではFBI(米連邦捜査局)が電子メールには暗号化を求めているが、ファクスではそんな決まりはなく簡単に通信できる。
また医療分野でもファクス人気は根強い。医療分野では、施設ごとにデータベースのシステムが統一されておらず、結局、患者のデータなどのやりとりもファクスでやってしまうというケースが非常に多い。英国の国民健康サービス(NHS)は、今も8000台以上のファクスを所有している(関連リンク)。
最近でも、新型コロナのPCR検査について、米テキサス州では急激に検査数が増えたことで、電子メールだけでなくファクスで検査結果を送ってくる医療機関も多くなり、大混乱に陥っているという。最初から、みんなが同じように使えるファクスに統一すれば、そんな混乱は起きにくいとの声も上がっている。また米国では警察当局でもいまだに広くファクスが使われているという。
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