店内は客が少ないのに25年連続増収 西松屋がコロナ禍でも絶好調の理由:「アパレル」「子ども服」「小売業」は三重苦か(3/7 ページ)
コロナ禍でも業績好調の西松屋チェーン。店内は客が少ないのに、なぜ成長を続けられるのか。同社の“非常識経営”に迫る。
西松屋の特徴は“ガラガラ”の店内、だが顧客満足度は高い
西松屋の店舗に行くと、大抵、店内はガラガラです。いつも「空いている」印象です。
お客さんは本当に来ているのか? と心配になるのですが、売り上げは伸びています。しかも、「顧客満足度」調査(サービス産業生産性協議会)では、何度も「衣料品専門店」分野で1位に。特に、子どもを持つ母親から絶大な人気を誇ります。
店舗はガラガラなのにもうかる理由。それは、同社が徹底的にムダを排除していった結果出来上がった、独自の効率的な店舗づくりにあったのです。
(1): 西松屋の店舗フォーマットがコロナ禍の繁盛店条件にぴったりあてはまった
西松屋の店舗は必ずしも良い立地にはありません。郊外の、幹線道路から一本入った脇道のような二等立地に店を構えています。なぜなら、その方が「賃料が安くなる」だけでなく、「目立たないので客で混みづらい」店を作れるからです。立地選定は大きな特徴の一つといえるかもしれません。
また、店内は主導線(売り場のメインとなる通路)の幅が2メートル程度とられています。通常は、ベビーカー2台が通れる1.5メートル程度の幅なのですが、同社ではベビーカー3台が楽々とすれ違えるほどの広さが特徴です。その分、商品が置けなくなるので、売り上げに限界がでてきます。売上至上主義であれば決してやらない導線計画です。
また、アパレル業界では当たり前のマネキンやセール品が並ぶワゴンも置かず、すっきりとした店内陳列という印象です。商品は、比較しやすいよう壁一面にハンギングで陳列されています。あまりカッコいい売り場ではありません。しかし、この陳列によって客の滞在時間は他社と比べて20分以上短くなったものの、1人当たり購入点数は4〜5点を維持できています。客にとっては「欲しいものがすぐに買えて、すぐに店を出られる買い物しやすい店」といえます。
さらに同社の特徴は、「1店舗当たりの売り上げが低い」ことです。実際に同業の赤ちゃん本舗(セブン&アイグループ)と比較するとよく分かります。
1店舗当たりの売り上げは、赤ちゃん本舗の方が6倍弱、坪効率も3倍強あります。しかし、西松屋の店舗数は赤ちゃん本舗の9倍。西松屋は人口10万人に1店舗程度の出店計画を持っていますので、出店していない立地はないほどです。時には自店の競合店として自店を出店させるという常識では考えられないこともしてきました。結果的に1店舗当たりの売り上げは1億4000万円ほどです。300坪(200〜300坪が同社の出店パターン)の面積を持つ店として売り上げは小さい部類に入ります。しかし、これが結果的にソーシャルディスタンスを保つという、With/アフターコロナの「繁盛店条件」につながっているのです。
「都心ではない郊外だから車で買い物に行ける。店舗が広くて、社会的距離がとりやすい。客が少ないからソーシャルディスタンスも保てる」という、まさに今の時代の繁盛店条件に西松屋はぴったりあてはまっているのです。
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