社員に「何か手伝うことはないですか?」と言わせる会社が時代に合わなくなっていくと思える、これだけの理由:「脱・職場第一主義」時代のニューノーマルに備えよ(2/4 ページ)
若手社員にありがちな、定時後の「何かやることありますか?」という伺い立て。日本企業は個々の役割分担があいまいだからこそ、こうした「職場第一主義」的ななりふりが求められてきた。しかし、時代の変化によって、こうした職場第一主義から抜け出す必要が生じてきている。
“就社”のメリット
職務を厳密に限定せず、職場から強い束縛を受けながらも融通が利く労働力を提供することで、長期安定的に収入を得ることができるという関係性は、働き手にとってもメリットがあるものです。そんなバランスを前提とし、職場に拘束されることをベースとする「職場第一主義」の体制には、拘束時間に対して報酬を支払うという形態がフィットします。
ところがそのバランスが崩れる方向へと影響を及ぼす変化が、世の中にいくつも見られるようになってきました。一つは、非正規と呼ばれる働き方の増加です。
非正規と呼ばれる働き方の約7割は、パートとアルバイトです。パートの場合は家計補助を目的として働く主婦層、アルバイトは学生などがイメージとして浮かびますが、その多くは、さまざまな背景からこうした働き方が適しているために、自ら望んで選んでいる「本意型」の人たちです。
問題は、本当は長期安定的に働きたいと考えているにもかかわらず、それが叶わなかったためにパートやアルバイト、労働者派遣などで働いている「不本意型」のケースです。今、非正規と呼ばれる働き方が雇用者全体の4割ほどを占めています。その中の一定数は「不本意型」であり、望ましい働き方が実現できていない人たちです。
「職場第一主義」も変わりつつある
2018年に厚生労働省は、原則として副業を認める形へと「モデル就業規則」を改定しました。また、19年には「終身雇用を続けるのは難しい」という経団連会長の言葉がセンセーショナルに報じられました。
これらの変化は、職場第一主義をあまねく社会に適用することができなくなってきた“脱・職場第一主義”への移行を暗示しているように思います。そこに働き方改革関連法が施行されたことで、長時間労働や不合理な待遇格差の是正(「日本版」同一労働同一賃金とも呼ばれています)なども進められ、変化の土壌がどんどん耕されてきています。
そして20年は、新型コロナウイルスの感染が世界中で拡大し、日本でも冒頭で紹介したような変化が起きています。コロナ禍により労働時間が減少し、それが給与減少に直結している現状は、職場第一主義に対する懐疑的な見方をより加速させているように思います。そんな、脱・職場第一主義へと移行しようとする時代の流れは、フィットする報酬の在り方も変化させていく可能性があります。
とはいえ職場第一主義にも先述したようなメリットはあります。今後も職場への拘束と引き換えに終身雇用するシステムを守り抜こうとする企業もあるはずです。ただ、これまで支配的立場にあった職場第一主義は徐々にそのシェアを下げていき、その動きに反比例する形で、望ましい報酬の在り方のバリエーションが増えていくことになると考えられます。
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