社員に「何か手伝うことはないですか?」と言わせる会社が時代に合わなくなっていくと思える、これだけの理由:「脱・職場第一主義」時代のニューノーマルに備えよ(3/4 ページ)
若手社員にありがちな、定時後の「何かやることありますか?」という伺い立て。日本企業は個々の役割分担があいまいだからこそ、こうした「職場第一主義」的ななりふりが求められてきた。しかし、時代の変化によって、こうした職場第一主義から抜け出す必要が生じてきている。
その象徴的な例の一つが、新卒社員の給与に差をつける動きです。大卒か高卒かなど、学歴で給与ベースに差をつけるケースは以前からありましたが、最近はソニーやメルカリなど学生時代に身に着けたスキルを評価して、新卒でも給与に差をつけるケースが出てきました。職場第一主義にもとづく横並びの美意識に反する変化の一つだといえます。
また、コロナ禍を機に在宅勤務の事例などが増えたことから、今まで以上に耳にすることが多くなったジョブ型雇用への移行なども、脱・職場第一主義への変化の一つと言えます。社員の職務を限定するジョブ型雇用であっても、拘束時間に対して報酬が支払われる点は同じかもしれません。しかしながら、仕事範囲が限定されることで働き手個人が仕事のペースをコントロールしやすくなります。ジョブ型雇用が導入され企業文化の中に溶け込んでいけば、他の人が残業している中で定時に帰宅したり、休みをとったりすることに後ろめたさを感じるようなことは徐々に薄れていくでしょう。
今後は「同一“成果”同一賃金」も?
さらに脱・職場第一主義が加速していくと、過去に「同一労働同一賃金が招く“ディストピア”とは?――『だらだら残業』だけではない、いくつもの落とし穴」という記事でも紹介した、「同一“成果”同一賃金」のような報酬形態も現実的になってくるかもしれません。
拘束時間に対して報酬が支払われる形態は、長時間働けば働くほど給与が増える仕組みです。その理屈は、同じ職務には同じ給与を支払う同一労働同一賃金を導入したとしても変わりません。しかし、そこには大きな矛盾が潜んでいます。
仮に、Bさんの半分の労働時間で2倍の成果を上げることができるAさんがいた場合、2人が同じ時給で同じ時間働くと給与は同じです。しかしAさんとBさんが出す成果の開きは4倍にもなります。実際にはここまで極端な差が出ることは少ないとしても、拘束時間に対して支払う報酬形態だと、得てしてそのようなひずみを生みがちです。
ただ、だからといって脱・職場第一主義の考え方をとれば全てが解決するということではありません。それぞれに一長一短があります。もし、一枚岩のチームワークを醸成したいと考えている企業であれば、職場第一主義の方が適しているようにも思います。個々のスキルや能力の差にこだわってしまうと、かえってギスギスしてしまうこともあるかもしれません。また、日本企業によくいわれる「家族的な温かみ」が失われてしまうことにつながる懸念もあります。
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