今秋リリース Appleの「App Clip」は、消費行動オンライン化の“出島”になる:リアルから秒速(5/5 ページ)
Appleの技術戦略には、ネットビジネスのトレンドを先取りするヒントが隠れています。そんなAppleが今秋「App Clip」をリリース予定にしています。リアル世界からオンライン領域へのユーザー流入を促す仕組みとして期待されますが、劇的な起爆剤になるでしょうか?
これらは全て、App Clipのように、リアル世界のユーザー行為を簡易的にオンライン化する取り組みです。そして、ユーザーシーンは違えども、以下のような重要な共通項を持っています。
(1)ユーザーが欲しいと思った「その瞬間に」「その場所を動かずに」、購買を終わらせることができる
(2)飲食店のテーブル、自宅の冷蔵庫、スタジアムの座席といった、一見するとデジタル要素のないありふれた「モノ」をオンラインへの入り口として利用する
しかし、上記のサービスが広く普及するには制約も残っていました。ブラウザやアプリへの遷移が前提であること。事前登録や決済情報の入力をしていないとお会計ができないこと。加えて、「モノ」からスマートフォンを起動させるという行為に多くの人が馴れていないこと。
App Clipは、これらの制約を打破しうるコンセプトです。ブラウザやアプリへの遷移不要、事前登録が不要、決済情報の入力も不要。そしてAppleのお墨付きによるiPhoneユーザーへの急速な普及も望める。
App Clipがもたらすのは、ユーザーが欲しいと思ったその瞬間、その場所での購買体験を、非デジタルなモノを入り口にオンラインへ誘導・完結する世界です。この変化をビジネスチャンスとするためには、自社のサービスをユーザーが「欲しい/使いたい」と感じる瞬間・場所をイメージすることが重要になるでしょう。そうすることで、自社サービスが提供するユーザー体験はリアルとオンラインの両面から最適化されていくはずです。
筆者プロフィール:中山悠介
三井物産株式会社、ボストン コンサルティング グループを経て、2017年にGMOペイメントゲートウェイ株式会社に入社。現在は、企業価値創造戦略統括本部、経営企画・新領域創造部 部長
Fintech領域における革新的ビジネスの企画・創出がミッションの一つ。次世代ビジネスの種まきのため、社内での新規事業インキュベーションだけでなく、M&A、スタートアップ投資、大手企業とのアライアンス構築など幅広く活動している。趣味は博物館、水族館、科学館などの「館」めぐり。
埼玉県立浦和高等学校、京都大学経済学部卒業
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