車内やベンチでまだ仕事? 首都圏の駅にシェアオフィスが続々:駅の使い方(3/4 ページ)
カバンの中にはPCを入れていて、いつでも仕事ができるようにしている――。このようなビジネスパーソンも多いかと思うが、鉄道会社もそんな人たちに向けてサービスを整備している。例えば、首都圏の主要駅にシェアオフィスが増えていて……。
駅ナカシェアオフィス事業をJR東日本が開始
JR東日本は、駅ナカシェアオフィス事業「STATION BOOTH」を19年8月に開始した(関連記事)。駅の中にブース型のシェアオフィスを設け、15分単位での利用が可能となっている。中には机やいすだけではなく、照明、Wi-Fi、電源、USBコンセントといったものが備わっている。ノートPCに接続できるモニターも設置されている。当然のことながら、空調も備わっている。まずは東京駅、新宿駅、池袋駅、立川駅でこの事業を開始し、多くの駅に広げていくという。
筆者は、その前に行われた品川駅での実証実験を取材したことがある。中に座ってみると、漫画喫茶の個室のように狭いものの、机やいすなどは十分なものが備わっていて、「仕事はできる」と感じた。ただPCを持ってこないと意味のないスペースであり、休憩目的であれば、カフェのほうがいい。
そして個室のスペースである。15分単位で利用できることからも分かるように、仕事に集中できるようにはなっているものの、長居をするにはちょっと窮屈だ。しかし、このジャストフィット感がJR東日本の戦略なのだろう。ジャストフィット感を出すことで人の入れ替えを促進させ、回転率を向上させる。
JR東日本は、働き方改革のサポートなどを目的としているものの、それだけではない。多くの人が外回りでPCやタブレットを持ち歩くようになっているので、適切なワークスペースを供給し、鉄道の利用にもつなげていくことを目指した。つまり、駅が便利な場所として存在感を増していく。そんな企業戦略がうかがえるのだ。
もっと言えば、街中のカフェなどに利用者を奪われず、自らの事業エリアに囲い込むことで、より利益を上げていく考えが見える。しかも、利用客の回転を頻繁にすることで、さらにその傾向を強くすることが可能だ。
飲み物などは用意されていない。しかし、駅の売店や自動販売機で買ったものを持ち込めばいい。しかもその運営会社も、JR東日本の子会社だ。
ジャストフィット感が利用者の集中力をアップさせ仕事がはかどり、それゆえに多くの人が入れ代わり立ち代わり利用するようになり、この事業と鉄道事業、及び関連事業が相互にリンクしていくようになる。設置スペースはカフェほど広くなくてもよく、単にブースを設置すればいいだけだ。余裕のある場所に設置するだけでいい。
こういった状況を見てか、ほかの鉄道会社もブース型のシェアオフィスを導入するようになった。
関連記事
- リモートワーク普及で迫りくる「通勤定期券」が終わる日
大手企業などがテレワークの本格導入を進める中で、通勤定期代の支給をやめる動きも目立つ。鉄道会社にとっては、通勤定期の割引率引き下げや廃止すら視野に入ってくる。通勤に伴う鉄道需要縮小は以前から予想されていた。通勤しない時代への準備はもう始まっている。 - 中央快速線E233系にトイレ設置、なんのために?
JR東日本の中央線快速で、トイレの使用が可能になることをご存じだろうか。「通勤電車にトイレ?」と思われた人もいるかもしれないが、なぜトイレを導入するのか。その背景に迫る。 - 新宿駅東西自由通路の開通で、どんな未来が待っているのか
「新宿駅は複雑で、迷いやすい」といった不満を感じていた人も多いのでは。そんな不満を解消するかのように「東西自由通路」が開通した。どのように変わったのかというと……。 - テレワークの「リバウンド」はなぜ起きる? 「意識が低い」で片付けられない構造的な問題
新型コロナの感染拡大を受けて、テレワークを導入した企業が急増した。ただ、緊急事態宣言解除後は実施率が低下している。テレワークが定着しなかった企業は「意識が低い」のか。筆者の窪田氏は違う見方をしていて……。 - リモートワーク中に“さぼった”ことありますか? 調査で明らかに
リモートワークをしていて、「悩みがある」人はどのくらいいるのだろうか。現在、リモートワークをしている人に聞いたところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.