プロ野球とJリーグ、コロナ禍でより運営が厳しいのはどっち? カギを握る「コロナ回帰率」とは:池田純のBizスポーツ(4/4 ページ)
感染拡大防止の観点から無観客試合を続けていたが、観客動員を始めたプロスポーツ。しかし、内情を見ると野球とサッカーで明暗が分かれたようだ。詳しく数字を見ると、コアなファンの数が命運を分けたようだ。さいたまブロンコスオーナー/横浜DeNAベイスターズ初代球団社長の池田純氏が解説する。
もう、カッコつけてる場合じゃない
もう「カッコつける経営」はやめなくてはならないタイミングに差し掛かっているのではないでしょうか。先日発表された年換算のGDPは昨対で−27.8%です。誰もが財布のひもを締めています。不要不急のスポーツ業界に限定したGDP的な数字を出せば、−50%を超えるのではないでしょうか。
多くの夢を背負い、これまで大きな恩恵を受け、“社会の公共財”を自任するプロ野球には、社会とスポーツ界をリードする立場として頑張ってもらいたいとは思います。しかし、少なくともそれは体力があるからこその、あくまで例外的な立ち位置です。B3さいたまブロンコスのような規模のクラブで考えれば、もはや今の状況は、「やるもやらないもどっちもディザスター(災害)」だと言っていいくらいの環境です。今まで通りやろうとするのは、単なる「カッコつけ」だと自戒しなくてはならないと私は考えています。
まずはどうにかして、コロナ後の新たな時代に向けて、今を生き抜かなくてはならないのです。もちろん、広く全球団・クラブのことを考えなくてはならない各競技のリーグの在り方を否定、批判するつもりも毛頭ありません。災害時には一定のキャパシティーを会場に求めるスタジアム規定、アリーナ規定や経営などのあらゆる規定などを抜本から見直すという決断も、各クラブが生き抜くためには必要になってくるでしょう。通常時の「回転率」を想定できない、コロナ禍での「コロナ回帰率」に即した経営を考えなければ、生きていけない。それほど、スポーツ界は追い詰められているというのが実情ではないでしょうか。
スポンサー離れを避けるため、赤字から目を背け、無理に試合だけをやろうとするのは「カッコつけ」でしかないように私は思います。これまでスポンサーは、ユニホームや試合会場での露出、それらのメディアでの露出を念頭にスポンサー費用を支払ってきた通念があります。ゆえに、スポンサー離れを懸念して「試合」をどうしても開催しようという力学がはたらきます。
しかし、民間企業なら、赤字経営は避けた方が良い。それは当然のことであり、スポーツだって例外ではありません。私が考える一番の悪は「赤字」です。借り入れでしのぐ「自転車操業」を前提にするべきではなく、コロナ禍においても「赤字は絶対に出さない」という意識を私は強く持ち続け、その前提で協調性を持ってこの特殊な時代をサバイブしていきたいと考えています。
著者プロフィール
池田 純(いけだ じゅん)
早稲田大卒業後、博報堂等を経て2007年にディー・エヌ・エーに参画。
2011年に35歳という史上最年少の若さで横浜DeNAベイスターズの初代球団社長に就任。
2016年まで社長を務め、さまざまな改革を主導し球団は5年間で単体での売上を倍増し黒字化を実現した。
退任後はスポーツ庁参与、明治大学学長特任補佐、Jリーグや日本ラグビー協会の特任理事等を歴任。
現在は(一社)さいたまスポーツコミッションの会長、
B3リーグ・さいたまブロンコスのオーナー兼取締役を務める一方、大戸屋やノジマ等企業の社外取締役からITやゲーム業界、スタートアップ等の顧問も務める。
池田純公式サイト「Plus J」: https://plus-j.jp/
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