プロ野球とJリーグ、コロナ禍でより運営が厳しいのはどっち? カギを握る「コロナ回帰率」とは:池田純のBizスポーツ(3/4 ページ)
感染拡大防止の観点から無観客試合を続けていたが、観客動員を始めたプロスポーツ。しかし、内情を見ると野球とサッカーで明暗が分かれたようだ。詳しく数字を見ると、コアなファンの数が命運を分けたようだ。さいたまブロンコスオーナー/横浜DeNAベイスターズ初代球団社長の池田純氏が解説する。
一方で、発表されている2019年の集計によると、JリーグはJ1が主催17試合で平均動員数が約2万人、J2が同21試合で約7000人なので、それぞれ年間延べ34万人、15万人ほどの母数になります。「回転率」(1人当たりの年間観戦試合数の平均)はJ1で「11.0」、J2で「14.3」との調査結果が出ており、ホーム観戦の割合を6割程度と低く見積もっても、計算上の1クラブ当たりのマーケットはJ1で約5.1万人、J2で約1.7万人になります。
それぞれ算出の前提が異なるにしろ、サッカーは野球に比べて一人当たりの「回転率」が高い実態がコロナ前からあったと捉えることができます。7月10日から5000人のキャパシティーで有観客開催を主催(J1で15試合、J2で19試合)するとなると、それぞれ延べ7.5万人、9.5万人を集める必要があるのです。つまり、チケット完売には「1.47〜5.59」という、野球の「0.19〜0.39」と比較しても、非常に高い「コロナ回帰率」を求められることになるのです。
平時には強いが、緊急時に仇となる「リピート層」
通常時の「回転率」が高ければ高いほど「1人の観戦回数が多い」=「コアなファンが多い」ことを意味します。そのことは、コロナ禍においては「コロナ回帰率」が高く必要になってしまうことを意味します。コアなファン、つまり多くのリピーターを獲得することは平常時には強みにもなりますが、先に述べたようにスポーツが不要不急のものと見なされている状況では、コアファンが多く、実態として母数が少ないことは逆に弱さになってしまいます。
平常時の30%ほどしかスポーツ観戦への意欲がないコロナの時代に、平常時でも1試合平均の動員数が5000人に満たないJ2中堅からJ3のクラブが、より厳しい経営を強いられるのは当然のこと。Bリーグは、さらに未知数。厳しく言えばB3は相当に厳しいことが数字からは予想せざるを得ないと考えています。
開催をやめるのも手
では、どうすればいいのか。極端な話、私は赤字になるなら試合を開催することすらやめてしまわざるを得ないのではないかと思っています。コロナ禍で先が見えない時代では、長期のリーグ戦を経ての優勝争いには、なかなか興味も持ちづらい。どんどん試合数を少なく、短期決戦のような形にしていかないと、J3やB3といった下部のリーグになればなるほど厳しくなります。
試合は数千人規模のスタジアム・アリーナで開催するものという常識も捨てるべきだと考えています。さいたまブロンコスでは、節目の何試合かだけ大きな会場で行い、あとは体育館に椅子を並べて開催する私案も持っています。そうしなければ、こちらが生きていけないのです。米国の野球界も、メジャーリーグは通常162試合のところを60試合にキュッとコンパクトに日程を短縮削減し、マイナーリーグは中止の決断を下しました。「コロナ回帰率」について考えれば、机上の計算でも球団・クラブ経営が成り立たないことは自明の理であり、誰もが容易に理解できることだと思います。
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