賞味期限5秒のせんべい!? じわり広がる「瞬間グルメ」の正体:食の流行をたどる(5/5 ページ)
賞味期限の短さを売りにした瞬間グルメが注目されている。バナナジュース、せんべい、生ハムなど多岐にわたる。そのビジネスチャンスとは?
瞬間グルメの価値を考える
「瞬間グルメ」とは、外食であってもテークアウトグルメであっても、その賞味期限の短さから、その場に行かなくては食べられないものである。これが、お持ち帰りやお取り寄せとの明確な差別化要素となる。消費者にとっては、その限定感、特別感が、商品を購入する上での重要なファクターとなる。
一方、事業主にとっては、3つのメリットがあると考える。
1つ目は、差別化することで選ばれるお店になることだ。これまで紹介した商品は、必ずしも目新しいものではない。すでに存在する商品に手間暇かけ、一番おいしい状態で食べてもらえるように「出来たて」を提供することで「限定感」「特別感」を出すことに成功している。
2つ目は、「話題性」があり、注目されやすいことだ。「賞味期限●秒」「お店に行って並ばないと食べられない」といったように、人に伝えたいスト―リーが豊富な商品であり、SNSやマスメディアで拡散されやすい。
3つ目は、リピートにつながりやすいことだ。一番おいしい状態で食べてもらえるため、満足値が上がってお店のファンが増えるのではないだろうか?
おいしい状態で食べてほしいため、お店では「熱いうちにお召し上がりください」などとサジェストをすることがある。しかし、つい会話に夢中になったり、写真を撮ることを優先したりして、一番おいしいタイミングを逃してしまいがちだ。そこで「賞味期限●秒」と提案すれば、消費者は主体的に、一番おいしいタイミングを逃さなくなる。
このように、「出来たて」から「瞬間グルメ」とネーミングを変えるだけでも、価値が向上することが分かる。人の心理とは面白いものだ。
昨今、新型コロナの影響で、行列ができるようなお店で気軽に料理を楽しむことが難しくなっている。感染防止対策などさまざまな配慮が求められるからだ。一方で、お取り寄せグルメなど通販の価値が見直されている。このような状況では、「わざわざ足を運ぶ」という行為に価値をより感じるようになった人も多いのではないだろうか。だからこそ、早く、自由に移動のできる世の中が戻ってほしいと切に願う。
著者プロフィール
有木 真理(ありき まり)
「ホットペッパーグルメ外食総研」上席研究員。1998年、同志社大学を卒業後、外食チェーン店へ。6年間勤務したのちに、フリーのフードコーディネーターに。2003年、リクルートに入社し、『ホットペッパーグルメ』に従事。全国の営業部長を経たのち、2017年、リクルートライフスタイル沖縄の代表を務めると共に、「ホットペッパーグルメ外食総研」の上席研究員として、食のトレンドや食文化の発信により、外食文化の醸成や更なる外食機会の創出を目指す。自身の年間外食回数300回以上。ジャンルは立ち飲みから高級店まで多岐にわたり、全国の食に詳しい。趣味はトライアスロン。胃腸の強さがうりで1日5食くらいは平気で食べることができる。食を通じて「人」と「事」をつなげるイベントオーガナイザーも務める。自らが「トレンドウォッチャー」として情報発信を行う。
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