デジタルで「4P」はどう変わる 価格の流動化と“新通貨”登場で新たに脚光を浴びる2つのビジネスモデルとは?:「新時代」のマーケティング教室(3/4 ページ)
マーケティング理論として知られる「マーケティング・ミックス」(4P)。デジタル時代にどう変わっている? 東京都立大学経済経営学部の水越康介教授が解説する。
例えば、ネットオークションがその典型である。ヤフオク!やメルカリなど、ネットオークションやフリマにおいて価格はあってないようなものであり、その時々の交渉によって異なる価格になっている。
売り手が価格を一方的に決めるのではなく、顧客がある程度価格の決定に参加している、という点にまさにデジタル時代らしさを感じられる。こうした場合には、お互いの自由な交渉によるだけではなく、顧客の参加の程度も事前に定めることができるだろう。
最も自由なのは、「買い手決定型」の価格設定である。例えば、厳密な「消費者同士」の関係ではないが、ロックバンドRadioheadがインターネットで楽曲を配信した際には、買い手が自由に価格を決めることができた。一方で、ネットオークションでは、多くの場合最低落札価格が売り手によって定められている。「価格提案型」の価格設定になっているわけである。
どの仕組みが良いかは一概にはいえない。Radioheadの試みは興味深いが、米調査会社のcomScoreによれば、ダウンロードした一定の人々の中で、約60%が無料でダウンロードしていたという。有料でダウンロードした人が支払った金額は平均6ドルであり、無料ダウンロードした人まで含めると、平均支払額は2.26ドルだったとされる。
2007年の取り組みかつ試験的なものだとはいえ、最近の曲をデジタルでダウンロードする場合には1曲数百円程度であることを考えると、やや安すぎるようにも感じる。デジタル時代における大きな特徴である顧客の参加の程度については、商品や顧客の特質に合わせてまだまだ検討が必要だといえるだろう。
関連記事
- デジタル時代、顧客の参加で変わる「4P」 ユーザーのハッキングまでも認める「共創」とは?
マーケティング理論として知られる「マーケティング・ミックス」(4P)。デジタル時代にどう変わっている? 東京都立大学経済経営学部の水越康介教授が解説する。 - 存在感を増す「応援する消費」から考える、マーケティングの意義
東京都立大学で教授を務め、マーケティングに詳しい水越康介氏の新連載。今回は新型コロナで注目を集めている「応援消費」について解説するとともに、いま、マーケティングすることの意義について考える。 - 「売れなかった」ハムサンド、カメラ50台で真相解明 高輪GW駅「無人決済コンビニ」の実力
高輪ゲートウェイ駅にオープンした無人コンビニ店舗「TOUCH TO GO」。無人化によるコスト削減に注目が集まる一方、データ活用という点でも大きな可能性を秘めている。約50台のカメラ映像を分析し「POS端末では分からなかったこと」が見えてきた。 - マーケティング1.0は、もう通用しないのか? 注意すべきナンバリングの「罠」
今やマーケティングは「4.0」の時代に。デジタルが大きな力を持つ今、マーケティングに必要なものとは? 東京都立大学で教授を務め、マーケティングに詳しい水越康介氏が1.0の時代から振り返り、解説する。 - サラダマックが大失敗した訳――「データの奇麗なウソ」をマーケッターはなぜ妄信するのか
かつてマクドナルドのサラダマックは大失敗。一見、消費者調査を踏まえた商品だった。「データの奇麗事」に騙されないコツを筆者が解説。 - 初週売り上げ、過去最高! 異例のロングスカートが生まれたワケ ヤフーと三越伊勢丹が見抜いた「隠れた欲求」
蓄えたデータを外部の企業にも開放し始めたヤフー。データを分析することで消費者の「隠れた欲求」を引き出し、商品開発を支援している。三越伊勢丹と一緒に生み出したロングスカートは、大ヒットを記録したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.