デジタルで「4P」はどう変わる 価格の流動化と“新通貨”登場で新たに脚光を浴びる2つのビジネスモデルとは?:「新時代」のマーケティング教室(2/4 ページ)
マーケティング理論として知られる「マーケティング・ミックス」(4P)。デジタル時代にどう変わっている? 東京都立大学経済経営学部の水越康介教授が解説する。
ダイナミックプライシングに求められるものとは?
先ほど見たUberにおけるサージブライシングは、一般的にはダイナミックプライシングと呼ばれ、昔から行われてきた。飛行機のチケットが分かりやすい例だ。一般に飛行機のチケットは、早めに購入すればするほど安くなる。また、繁忙期には値段が上がり、閑散期には値段が下がる。価格を細かく設定し直していくことで、需要に漏れなく対応できるようになるのだ。
また、スーパーで売られている総菜などは閉店時間に近づけば近づくほど安くなる。細かい価格の設定は、これまでの知見や経験をもとに計画されているが、最近のデジタルの発達により、より細かくそして半ば自動的に価格の最適化が計られるようになってきている。総菜の価格がデジタル化されて最適化される日も、間も無く来るかもしれない。
もちろん、全て自動的に行えばよいというわけでもない。かつて、Uberは台風の日などタイミングによっては7倍もの価格変動が生じ、大きな混乱を引き起こすことにもなった。いつもなら1000円で乗れるタクシーが急に7000円になっていたら、当然ながら多くの人は困惑してしまう。需要と供給の一致を図るといっても、重要なのはその変動の幅であり、調整の仕組みを欠かすことはできないのだ。
調整の仕組みについては、価格の変動を何に対応させるのかも重要になる。例えば、飛行機やホテルの場合には「いつ買うのか」「いつ乗るのか」といった「時期」に対応した変動だといえる。一方で、顧客に応じて変動させることもできる。例えば、最初の利用と2回目以降の利用や、初見の顧客と常連の顧客で価格を変動させる、といったことも考えられるだろう。こうした方式も従来フリークエンシープログラムやCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)として利用されてきたが、デジタルの発達は、こうした価格設定をますます柔軟で複雑なものとしている。
ダイナミックプライシングは顧客間でも
ダイナミックプライシングは、企業と顧客の間だけではなく、顧客間の取引においてもみることができる。
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