コロナ時代の「オフィス再構築」が、ただ「縮小」では終わらない理由 総務にとってチャンスか、ピンチか:新連載・総務プロの「攻めと守り」(2/3 ページ)
2001年前後のITバブル、08年のリーマンショックなど、環境変化が起きると必ずといっていいほど、オフィスの再構築が起きてきた。新型コロナが引き起こした「オフィスの再構築」も定番の流れといえるが、特殊な側面もある。
ただここで注意が必要なのは、ITバブル、リーマンショックの際は「人材リストラ」(解雇)と無駄の排除(遊休資産の整理など)に基づいて起きたオフィス縮小であって、その後のリバウンド期(09年〜19年)で解消したことです。その後のオフィス需要は「働きがいあるオフィス」「カッコいいおしゃれなオフィス」というトレンドとともに、むしろニーズが沸騰し、坪単価も上昇の一途をたどりました。
直近10年間に総務を経験された方々は、これらを肌で感じていることでしょう。自分たちの働く魅力的なオフィスを顧客や新入社員へ紹介する「ライブオフィス」が流行したのもこの延長線上のトレンドです。
会社内では「何でも屋」といわれる総務として、中にはつまらない仕事(失礼!)も正直たくさんある一方で、この「自社の魅力的なオフィスづくり」や新オフィスへの移転プロジェクトなどは非常に楽しい仕事の一つとして挙げられます。
インテリアレイアウトやホスピタリティあるオフィスサービスの構築など女性を中心にそのスキルを磨くチャンスも広がったことも事実です。社員への福利厚生の進化も優秀人材獲得戦略の一つとして、多くの企業である意味、競争が生まれるほど過熱してきました。総務の戦略と実践に大きな影響を与えている、健康経営、ウェル・ビーイング、ダイバーシティなどのキーワードも登場し、日々もろもろの活動に取り組んでいます──そんな状況で、今回のコロナがやってきたのです。
では、今回のコロナによるオフィスの変革は、過去の変革とは何が違うのでしょうか。上記に挙げたキーワードのように、ここまで総務の業務内容の健全な進化に対し、今後どのような方向修正が求められるのでしょうか。こうした変化は、総務やファシリティマネジメントのキャリアにとってチャンスなのか、それともピンチなのでしょうか……。
私の場合は、大きな「チャンス」と捉えています。
図表の「不動産」に関して比べてみましょう。リーマン危機の時は、市場の縮小に伴い、ビジネスの内容は変えずに規模を縮小、それを追うようにしてリストラを実施する企業が多かったため、単純にオフィスのニーズ減少に伴い、不動産市場の収縮が起きました。
これに対し、今回のコロナ危機のケースで明らかに違うのは、リストラが限定的なのに加え、テクノロジーの進化によりリモートワークが十分可能で生産性を維持できていること。そしてビジネスパーソンがこのことを実感し、働き方が変わってきている点です。その結果、不動産ニーズが減少しており、私は「健全な減少」と表現しています。
この2つの状況を、総務の視点で見るとどうでしょうか。
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