「金太郎アメ的なゼネラリスト人材」育成が目的ではなくなる──デジタル時代の人事部門に求められる「3つの能力」:有識者が語る(4/4 ページ)
デジタル時代の到来は、日本企業の伝統的日本型人材マネジメントシステムだけでなく、人事部門に求められるケイパビリティ(組織能力)にも変容を迫ろうとしている。
・デザインスキル(デザイン思考)
デジタル時代の人事部門に求められる新たなケイパビリティとして、「デザインスキル」が挙げられる。人事部門にとっての最大ステークホルダーである従業員の声に耳を傾け、事業やビジネスの課題と向き合い人事部門の有するデータやテクノロジーを活用して従業員にとどまらず、社内外のステークホルダーに対してもコミュニケーションできるスキルである。
人事部門が価値提供する相手は社内の幹部、現場マネジャー、従業員といった内部ステークホルダーだけではなく、企業活動のアウトカム(成果)が提供される投資家や顧客、社会そのものといった外部ステークホルダーも対象となる。そうした外部・広く社会の声にも耳を傾け、提起される課題に対して解決策を講じなければならない。
20年6月に実施されたある上場企業の株主総会では、機関投資家が投資先の取締役会メンバーに対して、「どうやってウィズコロナ時代で売上や利益を回復させるのか」を問うのではなく、「どのようにして従業員に対して安全な労働環境を提供しているのか」「従業員のリモートやオンラインでの業務遂行に対する配慮、生産性向上につなげるための具体策は何か」といった人材戦略を問うていた。
人事部門は、このような会社や従業員を取り巻く外部・社会からの声や課題認識を受け止め、その解決に向けた具体的な取り組みやソリューションを生み出す必要がある。
まさしくそれは、「デザイン思考」「デザインスキル」そのものである。人材マネジメントをどうデザイン(制度設計)するかだけではなく、会社の従業員に対して、社会の中の一市民としてどのような存在でいてほしいのか、会社や組織の中でどんな経験をしてどのようなキャリアを歩んでいってもらいたいのか、そうした思考を通じてビジネス領域から吸い上げた課題と向き合い人事部門の有するデータやテクノロジーを駆使し、社内外ステークホルダーに対して価値提供する行動こそがこれからの人事部門に求められる新たなケイパビリティとなる。
以上、デジタル時代に求められる3つのケイパビリティを提案させていただいた。人事部門の在り方そのものにトランスフォーメーションが求められるのである。
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