菅政権の肝いり「デジタル庁」は中途半端で大丈夫か――電子国家・エストニアの教訓:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
菅新政権の目玉政策の一つが「デジタル庁」の新設。だが2021年中の設置、時限組織というのは中途半端では。平井デジタル改革相も口にするデジタル大国・エストニアの事例を見ると、便利さにはリスクも伴う。セキュリティ対策も徹底した組織運営が必要だろう。
エストニアと関係を深めてきた日本
実は、日本は数年前から、かなりエストニアの影響を受けていると言っていい。というのも、政府関係者がこぞってエストニアと関係を強めてきたからだ。
例えば、18年1月には、安倍晋三前首相がエストニアを訪問し、ユリ・ラタス首相と会談している。そしてサイバー・IT社会であるエストニアとの協力関係の強化を確認。エストニアにあるNATO(北大西洋条約機構)のサイバー防衛協力センターに日本が参加することも合意している。
その年の10月には、当時、IT政策担当大臣だった平井大臣がエストニアを訪れ、安倍前首相の代理として「タリン・デジタルサミット2018」に参加した。要人らとも会談している。また19年には、エストニアのケルスティ・カリユライド共和国大統領が訪日し、安倍前首相と会談して「IT・サイバー分野等における官民の協力が進んでいる」と述べている。20年2月にも、17年から日本・エストニア友好議連の会長を務める平井大臣が、来日中のラタス首相らと晩餐会に出席している。
とにかく日本は現在までに、エストニアとはかなり近い関係になっている。平井大臣がテレビ番組でエストニアに触れるのは自然なことなのだろう。
では、エストニアはそれほどITやデジタル化で進んだ国なのか。
内閣府によれば、「エストニア国民の98%が国民IDカードを所持しており、このIDカードを使って引っ越しなど生活に関連したさまざまな行政手続きを全て電子的に行うことができる電子政府が進んでいます」という。
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