丸亀製麺の売上高が対前年比90%まで回復 カギは「衛生マーケティング」と持ち帰り専用容器:飲食店を科学する(4/5 ページ)
コロナ禍に苦しむ外食産業。一方、丸亀製麺の売り上げ(8月)は対前年比90%まで回復した。どういった施策を行ったのか。
残念な「逆ブランディング行為」
コロナ禍においては、多くの飲食店がテークアウトを開始しました。私も実際に、あらゆるテークアウト商品の試食調査を行いましたが、正直に申し上げて「急場しのぎ」の商品も少なくありませんでした。せっかく始めたテークアウトやデリバリーでお店の評判を下げてしまう。私はこれを「逆ブランディング行為」と呼んでいます。
緊急事態宣言という未曾有(みぞう)の状況で、クオリティーの高いテークアウト商品を開発するのはとても大変なことです。しかし、私はこうした時期だからこそ「お客さまの期待を裏切らないお店づくり」が本当に大切だと思っています。
飲食店の基本に「QSC」という考え方があります。QはQuality(クオリティー=品質)、SはService(サービス)、CはCleanliness(クレンリネス=衛生)です。
全ての飲食店にとって最重要の繁盛要素がQSCです。しかし、コロナ前には、QSCレベルが低いにもかかわらず「グルメサイトの点数が高い」「インスタ映えする商品がある」といった理由で繁盛を実現しているお店が少なからずあったことも事実です。
実際に皆さんもグルメサイトの点数やインスタの写真を見て来店したけれど、がっかりしたという経験が一度や二度はあるはずです。
当社のコンサルティングご支援先などでは、専用のQSCチェックシートを作成します。その上で、店舗ごとにチェックを行い項目別の達成度合を数値化(見える化)します。そして、前月・系列店舗などとの比較を行い「QSCにおける自店の強み・弱み」を明確にした上で、改善を行うPDCAサイクルを構築しています。私は「QSCチェック基準」は、そのお店・その会社の目指すべき姿、ブランド像を表す重要指標だと思っています。
基準は各社によって異なりますが、100点満点中70点に満たない店舗には「イエローカード」を出し、本部スタッフなどが介入した上で店長と一緒にQSC改善に取り組むといった対策を行ってもらっています。
コロナ禍においては、多くの消費者が外食を控えました。そして、緊急事態宣言後、久々に外食をする場として「以前に来店したことがある」「QSCが高い」「なじみのお店」を選ぶ傾向が圧倒的に強くなっています。そうした意味でも、丸亀製麺のQSCに対する取り組みや実績は、改めて飲食店経営におけるQSCの大切さを思い出させてくれます。
「そんなのはトリドールのような上場企業だからできる取り組みだ!」と思われる方もいるかもしれません。しかし、決してそんなことはありません。
次項では、繁華街の立ち飲み居酒屋業態にもかかわらず、7月度には前年を超える売り上げを達成したお店の事例を見ていきます。
関連記事
- 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。 - 「タピオカバブル」がコロナで大崩壊 “聖地”原宿の閉店ラッシュと各社の生き残り策
タピオカバブルが新型コロナウイルスの影響で崩壊した。タピオカ専門店が集中する東京・原宿では閉店が相次ぐ。各社の生き残り策とは? - スシローとくら寿司 「価格帯」と「シャリ」から見えた戦略の“決定的”な違いとは
大手回転寿司チェーンのスシローとくら寿司。標準的な寿司の重さはほぼ一緒。しかし、価格とシャリの違いから戦略の違いが見えてきた。 - 「生ビール190円」の原価率は85%? お客が3杯飲んでもしっかり利益が出る仕組みとは
「生ビール1杯190円」という看板を見かける。安さでお客を引き寄せる戦略だが、実は隠されたメリットもある。どんな狙いがあるのか。 - 吉祥寺でステーキ戦争勃発 「いきなり!」「やっぱり」「ステーキ屋松」の決定的な違いをプロが分析
沖縄発の「やっぱりステーキ」が東京・吉祥寺に進出。この地には「いきなり!ステーキ」と「ステーキ屋松」がある。プロが3店舗を分析して分かった決定的な違いとは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.