属人化、在宅勤務、人手不足……課題山積の経理部門、何から手を付ける?:総務・人事・経理Weekの講演から探る(3/5 ページ)
業務の属人化、在宅勤務による生産性の低下、繁忙期の人手不足など課題が山積する経理部門だが、どう解決すればいいのだろうか。CSアカウンティングの中尾篤史社長による「経理部門の働き方改革のススメ〜業務効率を上げるテクニックを伝授〜」の講演からヒントを探る。
経理あるある、こう解決する
マスター設定は、ゴールを設定しているかどうかが成否を決めるという。何をどう管理・集計したいのかを明確化してからマスターを設定すれば、自動集計により試算表やBS(賃借対照表)やPL(損益計算書)も手軽に出せるようになる。「マスター設定を制する者は時間を制する」(中尾氏)
二重入力、どう解決する?
経理では財務会計の数字だけでなく、管理会計の数字も見たいことがあるが、イチから資料を作ろうとするととても手間がかかることが多い。その際には、財務会計の数字を使い、作業をした方が当然いい。あらかじめ集計科目を設定しておけば、自動的に管理会計の数字が出てくるようになるだろう。
効率化という観点からは「二重入力」の課題にも対応していかなければならない。同じデータの二重入力は無駄な時間がかかってしまうし、ミスの原因にもなる。例えば、経費申請の場合、事業部書が入力するので勘定科目などを間違えることが多い。そうすると、経理が差し戻してムダな時間がかかってしまう。こうしたケースを回避するには、勘定科目を入力者には見せず、経費の内容だけで選んで申請できるようにすべきだと中尾氏はいう。これもマスターをきちんと設定しておけば、事業側は差し戻しされず、経理側も手間が省けるようになるだろう。
ペーパーレス、どう実現する?
紙の書類が多いと、在宅勤務がしにくくなってしまう。大企業の例で考えると、経費申請だけでも請求書を書いて、支払い依頼書を書いて、経常伝票に転記して、支払い予定表に入れ、振り込みデータを出力し、出金伝票を作成する――という流れになる。何度も重複した情報を繰り返し入力するのは間違いなく無駄な手間だ。
一方、経費精算システムなら、一度入力すればよく、経理部門スタッフはチェックするだけで済むようになる。入力項目と勘定科目をひも付けておけば、事業部の人の申請ミスも減らせる。電子帳簿保存法に対応すれば、ペーパーレス化を推進できるようになるだろう。
そもそもの手入力を減らす工夫も効果的だ。Excelのひな型はなるべく統一し、標準化することが重要になる。APIでシステム間を連携させたり、RPAで単純入力を行うことで、人の入力作業を減らすこともできる。ひな型を統一できれば、手戻りが少なくなるだけでなく、RPAを導入する際にロボットの契約数を最低限に抑えることができる。さらにグループ会社で勘定科目体系を統一すれば、グループ内のサポートや人の異動が容易になる。マニュアル作成や連結などの作業負担も軽減できる。
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