いまさら聞けないTOB Q&A(3/3 ページ)
NTTがNTTドコモに対してTOBを行う。昨今しばしば話題になるTOBだが、いったいどのようなものなのか。なぜTOBがかかると株価が上昇するのか。TOBが成功するための決め手はどのあたりにあるのか。改めてQ&A形式でまとめた。
TOB価格よりもドコモの株価が安いのはなぜか?
TOBでは期限を定めて、その価格でNTTが株を買い取る。しかし10月2日のドコモ株の終値は3878円とTOB価格の3900円よりも22円ほど安い。これは、なぜか。一般には、TOBには不成立となるリスクがあり、その分だけ安い株価となるといわれる。ただし今回はTOBはまず間違いなく成立すると見られている。
投資家は簡単にTOBに応募できるわけではなく、今回の引受会社である三菱UFJモルガン・スタンレー証券に口座を用意し、郵送で申し込む必要がある。TOBは11月16日の16時が期限とされており、そこまでに投資家の応募が完了している必要がある。
これら手間の分だけプレミアムが小さくなり、そのためにTOB価格よりもわずかに安い株価で推移していると考えられる。
TOBは成立するのか?
TOBが成立しなかった場合、もとの状況に戻る。株価もTOB発表前の水準へ下落することが想定される。
TOBが成立し、NTTが議決権の90%以上を取得した場合は、NTTは残った株主に売り渡し請求を行う予定だ。これは大株主が少数株主から強制的に株式を買い取れる制度だ。このときの買取価格はTOB価格と同水準にする予定としている。信託銀行経由で持っているドコモ株が自動的に売り渡され、代金を振り込まれる流れとなる。
ただし振り込みはしばらく先になる。投資家がTOBに応募した場合、11月24日に決済が行われ、その後速やかに振り込まれるが、売り渡し請求によって買い取られた場合、振り込みは数カ月後になると見られ、また上場廃止になると市場での売却もできない。
そのため、ほとんどの投資家はTOBに応募するか、期限前に市場で株式を売却することになるだろう。TOB不成立は買い付け予定数の下限を下回った場合だが、今回のドコモの場合、下限は所有割合の0.45%だ。売り渡し請求など、TOBに応募しなかった株主を締め出す施策も用意されていることや、プレミアムの高さも相まって、TOBはまず間違いなく成立すると見られる。
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