総務の仕事は「目立たない」「感謝されない」……戦後最大の「変わるチャンス」到来 36の業務から「求められる役割」を考える:総務プロの「攻めと守り」(1/4 ページ)
会社を運営するためのベースとなる縁の下の裏方仕事、雑用係というイメージの総務。その中でも「目立つ」仕事は何なのか。
連載:総務プロの「攻めと守り」
連載第1回では、ウィズコロナ時代のオフィス変革は、総務部にとって「またとないチャンス」であること、過去のITバブル崩壊、リーマンショック時と比べると、総務の役割が異なることを簡単に説明しました。
連載2回目以降は、チャンスと考えられる具体的な内容、経営への効果、改革プロジェクトを推進するための社内稟議のコツなどに触れたいと思います。25年以上、計7社で総務・ファシリティマネジメントを務めた筆者の経験を基に、なるべく一般論ではなく、現場感のある内容紹介に努めます。総務部のみならずIT部門、人事部門の方々も参考にしていただけると幸いです。
前回でも触れました通り、新型コロナが引き起こしているオフィス改革は、リーマンショック時と比較すると「コスト削減のための縮小」ではなく、働き方改革、DX(デジタルトランスフォーメーション)も含めた新たなチャレンジであり、その結果としてのオフィス縮小は「健全な縮小」と位置付けられる、というのが大きなポイントでした。この位置付けの違いがあるので、総務業務では対応が難しい点が出てきます。
「ぎこちないながらも、一生懸命に考えて実践」してきた企業の総務部
「ウィズコロナ時代のオフィス変革は、総務にとってチャンスである」という話に移る前に、この50年間ほどの「オフィスへの期待」を前提として、“総務のプロ”として、私なりに整理したいと思います。
これまでの常識では、そもそもオフィス=働きに行く場所、多様化している社員ニーズへ対応できる「セットメニュー」のような場所であることが前提でした。実はそれ自体「無駄がたくさん存在していた」のです。
例えば1000人の社員に対し固定席で運用する場合はその15%増しの席数(1150席)くらいを確保して移動や増加対応する必要があります。これでも総務からみたら「満席です」と言わざるを得ないのが実情でした。
何とも無駄と思えますが、Name on Desk(座席表に名前を埋めた表)の表を実際に部門の担当者と作成してみたら、これでも結構「席が埋まっている状態」となるのが分かります。ただ実際に執務中に測定してみると、会議にいったり外出したり、コンビニに行ったり……で、固定席の利用率はせいぜい60%平均程度であることもデータから裏付けられた事実でした。
つまり、40%以上の席は人がいないというのがごく普通に「当たり前」とされながらも、社員の働き方が「とにかくオフィスへ来て働く」というモデルである以上、仕方なくそのままオフィスは運用され続けました。
少し工夫を入れてフリーアドレス制やシェアリングデスクなどもトライしてみますが、結局社員はいつも同じ席に固まって仕事をしている結果となり、フリーアドレスは限定的な効果しか出ませんでした。
時には総務が発案して作った「休憩コーナー」(禁煙)には社員は思ったほど利用してくれず、その理由を調査してみると「サボっていると思われたくないから」ということが分かったり……。
漠然とその意図と反したことが当たり前に頻発していた状況です。その理由は供給側(スペース側)の問題ではなく、ニーズ側(社員側)が変わっていなかったからなのです。そのような努力が無駄だったかどうかの判断は難しいですが、少なくとも働き方やマインドセット、行動パターンの変化のない中で、ハード側だけの施策は無駄で終わる場合が多かったのは事実です。
それでも総務部は、市場のトレンドをみながら一生懸命オフィスの在り方を、ぎこちないながらも自分たちなりに一生懸命に考えてそれなりに実践してきたと思います。
思い切った変革ができなかった原因は?
そうやっていろいろとトライしながら、総務部がオフィススペースを準備していく流れだと、必然的に多様なニーズに対応できる“てんこ盛り”に作っておけば間違いない、という“作る側の都合”となることも理解されます。
具体的なベンチマークでいうと、そのてんこ盛りメニューを全部クリアするには「一人頭、10平米くらいは必要である」となり、それを設計者も内装工事業者側も暗黙の了解(スペースは多いほどもうかる仕組み)とした時代が長く続いたことになります。
長い目でみたらこの時期(約50年くらい)は「集約型のオフィスブーム」だったということでしょうか。ここ10年くらいのデジタル変化、働き方改革、ペーパーレス、DXなどは実は進化していたのですが、大抵のオフィス管理者(総務)はそれを横目でみながら、それを思い切って導入もできない……。
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