ビックカメラ、ワークマン、アルペン…… 異業種の参入で盛り上がるアウトドア市場の今:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)
アウトドア市場が盛り上がっている。ビックカメラやコーナン商事が相次いで専門店をオープンするなど、異業種からの参入も相次ぐ。どこまで伸びるのか。
決算が好調なゴールドウイン
ゴールドウインが展開する「ザ・ノース・フェイス」は、1966年に米サンフランシスコで創業した世界最大級のアウトドアメーカーだ。78年からゴールドウインが輸入を始め、94年に日本と韓国において商標権を取得している。
ザ・ノース・フェイスは、エベレストの頂上のような過酷な条件でも着用できる製品を目指してきた。その一方で、高い機能を保持しつつタウンウェアとしても使えるように、ターゲットの拡大を目指してきた。それが、アウトドア市場の活性化に寄与している。
例えば、2018年から販売しているマタニティーウェア。普通に考えれば、アウトドアとマタニティは結びつきにくい。しかし、アウドドア製品のストレッチ性、動きやすさ、通気性といった機能がマタニティに活用されている。体形の変化が著しい妊娠中から産後まで、心地よく着用できる機能性を追求している。軽量で防水機能を備えるなど、体への負担が少なく、産後の子どもを連れた外出までを想定している。レインコート、ワンピース、オーバーオールなどのアイテムを展開している。
また、長方形のリュック「シャトルデイパック」は、ビジネスパーソンの通勤でよく見かけるほど普及している。スーツに合わせやすく、高級感があって強度が高い素材を使っている。タブレット、PC、書類を入れる収納も豊富で、日帰りや1泊2日の短期出張のニーズにも対応している。
20年3月期、ゴールドウインは売上高978億9900万円(前年同期比15.3%増)、営業利益174億8000万円(同47.4%増)となった。10期連続の増収であり、営業利益は12期連続の増益となった。この好業績をけん引しているのが、直営で80店あるザ・ノース・フェイスだ。今期は、同社の直営店のうち9割以上の店舗が新型コロナの影響で休業していた時期があった。しかし、ザ・ノース・フェイスは9割ほどまでV字回復しており、人気の高さを物語っている。
星野リゾートのグランピング
アウトドアは用具ばかりでなく、施設でも斬新な試みが見られる。
星野リゾートが運営する「星のや富士」(山梨県富士河口湖町)は、15年10月に日本初のグランピングリゾートとして開業。欧米で人気のグランピングとは「優雅な」を意味するグラマラスと、キャンピングを合わせた造語で、キャンプ設営などの手間を省いたアウトドアのレジャーだ。つまり、アウトドアの用具や食材は施設にそろっているので、利用者は気軽に手ぶらでもキャンプを楽しめるのが特徴だ。
「星のや」ブランドとしては4つ目の施設で、コンセプトは「丘陵のグランピング」。約6ヘクタールの広大な森の中に、大自然と触れ合えるリゾート空間をデザイン。焚火を眺めながら過ごしたり、石窯でピザを焼いたりといった体験を提供する。また、森の中でジビエのコース料理を味わったり、自然の中で体を動かす爽快さを感じたりといったように、現代の都市生活では体験しにくい非日常も提供している。
キャビン(客室)は1室1泊6万7000円から(税・サービス料10%別、食事別)。顧客層は30〜50代が中心で、2人での来館が多い。
夏の稼働は、「Go To トラベル」の効果もあり、近隣客の利用が増えた結果、前年並みとなった。星野佳路社長の提唱するマイクロツーリズム(近所旅行)の成果が出た。
同社・広報では、「グランピングは3密回避と親和性が高く、アウトドアを楽しむためのお膳(ぜん)立てもしている。コロナ禍において安心して楽しめる。そして、誰もが本能的に心地よいと感じる旅のスタイルとして認知されてきている」と、手応えを感じている。
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