内定者が採用活動を担当? コロナ禍で激変する新卒採用の形、リファラル採用の新潮流:「待ち」ではない採用を(4/4 ページ)
人事業務の大きな負担である「採用」業務。特にコロナ禍によって、新卒採用にも変化の機運が高まっている。そんな中で、リファラル採用を活用するのも一つの手だ。内定者とともに、次年度の新卒採用をリファラル採用で行うケースも出てきている。
そのため、企業は会社の“リアル”を生々しく伝えるために、会社で働く従業員や選考を受けた内定者からリアルな会社の魅力を口コミで伝えることが重要になるのです。加えて、情報の量が増えれば増えるほど、説明的な言語だけではなく感覚的な言語、つまり「なぜあなたはここで働くのか?」といったストーリーの影響力が増していくはずです。つまり、このような学生の志向性の変化をふまえながら、コロナ禍での就職活動という特殊な状況下だからこそ「内定者の視点」を取り入れていくことが必要なのです。
一方で、企業が学生を見極める方法についても、「優秀でない人を採らない採用」から「優秀な人材を採る採用」にアップデートする必要があります。日本の新卒一括採用では、どうしても見極めが難しく、学歴などで「優秀でない人を採らない」といった基準に寄りがちです。海外では新卒でも就業経験あり・なしで判断をして、実力主義の転職市場に近い形で採用します。日本でもインターンシップが当たり前となり、ジョブ型への移行も進む中、欧米のようにスキルを見極める採用基準に近づいていくのではないでしょうか。そうなると、“リファレンス”を生かしたリファラル採用が重要になってきます。
リファラル採用は「中途採用だけ」のものではない
リファラル採用とは一言で説明すると、社内外の信頼できる人脈を介した採用手法です。人材不足が叫ばれる中でも優秀な人材を採用するため、富士通や日立製作所をはじめ大手企業でも活用が広がっています。リファラル採用と聞いた方の中には「前職の仲間を紹介する」というように中途採用をイメージする方も多いのですが、実は新卒採用にも取り入れる企業が増えています。東急建設のように内定者に協力してもらい、説明会やインターンシップ、選考の案内を後輩に紹介してもらう形です。
新卒採用でリファラル採用する場合、中途採用よりも1人あたりの紹介数が多くなるのが特徴です。日本はまだ生涯転職回数が少ないため転職相談を受けることも少ないですが、内定者の周りには多くの就活生が存在します。そして就職活動の際、多くの学生は身の回りの先輩に相談するものです。こういった機会を活用して、企業からではなく内定者から生の声を伝えることが、会社のリアルを知ってもらう一つのきっかけになるのではないでしょうか。
東急建設の加藤氏は内定者とともに行うリファラル採用について「特に理系の学生は、研究が忙しいためそこまで多くの企業を受けることはしません。その中で、内定者が後輩に紹介することで志望先企業の選択肢に入るきっかけとなることを期待しています」と話しています。
昨今のコロナ禍への対応や学生の志向性、情報トレンドなど変化の激しい新卒採用において、企業の人事だけでニーズを捉えて変化に対応していくことは難しいでしょう。内定者に味方となってもらい、彼らと一緒に採用コンテンツを企画し、生々しい情報から自社の口コミを広げてもらうことが一つの解決策となるはずです。新卒採用担当のミッションは多岐にわたり、21卒内定者のフォローから22卒の母集団形成まで並行して行うことは大変ですが、足元だけではなく中長期を見据えて自社採用力を強化しなければ、毎年同じ負のスパイラルから抜け出せません。
これまでは待ち型の採用をしている方が楽かつ堅実でしたが、景況感が変わりコストカットや質の高い採用が求められる今、市場の変化に対してピンチをチャンスに変えるために戦略的な自社採用を始めてみるいいタイミングになっています。新卒人事の業務工数を削減しながらも、高い成果を得るという観点から、リファラル採用を活用してみるのもよいかもしれません。
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