Bリーグは、プロ野球とJリーグを超えられるか? 「B・J業務提携」の読み解き方:池田純のBizスポーツ(3/5 ページ)
業務提携を発表したBリーグとJリーグ。しかし、業務提携は成功させるのがなかなか難しいと指摘するのが、さいたまブロンコスオーナー/横浜DeNAベイスターズ初代球団社長の池田純氏だ。Jリーグやプロ野球を超えるため、Bリーグに求められるものとは?
主従関係はどうなるのか?
今回の業務提携によって資本の移動などがあるのかなど、その裏側は私のあずかり知るところではありません。もしJリーグ(AX)がBリーグ(BX)から「その強みを得たい」というものがあるなら、つまり「AX<BX」の強みの構造がどこかにあるならば、相互関係が成り立つでしょう。
ただ、BリーグがJリーグの発注額を超えることは現状でありませんし、Jリーグには10年で2100億円ともいわれるDAZNからの放映権料による資金面の優位性もある。今回の業務提携で、Bリーグが同業種であるJリーグに何を提供できるのでしょうか。渡せるものがなければ対等な関係にはなり得ません。そして、業務提携の先にあらかじめゴールをどう“したたかに”見据えているのかが私には至極興味があります。
私自身の関心事としては、埼玉でのブロンコスの経営、人気づくりにおいて、今回の業務提携によって放映権の在り方、地域との接点のつくり方に、どのような影響が出てくるかというものもあります。
スポーツと地域活性化の行方は?
クラブが、それぞれの地域で接点をつくる上で重要なのは、試合と試合の結果を地域の人々にどれくらい見せられるかということ。スポーツによる地域活性化において、肝になるのがローカルのテレビ局やローカルの新聞社の存在です。ベイスターズでいえば神奈川新聞とtvk(テレビ神奈川)のように古くからある地域に密着したメディアでした。こうしたメディアを通すことで、地域で生活する一般生活者や地域の経済人に情報が届き、多様な関係を築いていくための土台となる側面があります。
Jリーグは、16年まで各地域の放送局が個別に制作会社と契約し、放送した映像の著作権も放送局が持っていました。これをスカパー!が取りまとめていた形です。DAZNが放映権を取得した17年以降は、映像の著作権管理や映像制作をJリーグが主体となって行うようになったと聞きます。
今回の業務提携によってBリーグの放映権の形が、どこまでJリーグと一元化されるのかは分かりませんが、「ホームの試合は地元の地方局で見られるけれども、アウェー戦を見ようと思ったらDAZNに入らないと見られない」というような、中央集権的にリーグにだけ映像の権利が置かれる構図は現状のBリーグには時期尚早な気もします。一方で、BリーグもDAZNからの巨大な放映権料を近い将来見込んでいる、したたかなゴール設定のプロセスなのかもしれません。
ただ、野球でもサッカーでもない、まだまだ発展途上なバスケットボールにおいては、お金よりもまずは地域との接点、バスケファンでない地域の人々も気軽に試合を家庭で見ることのできる「無料で受動的な接点」がまだまだ重要ではないかと私個人は考えています。そういった観点で理想的なのは、ホームもアウェーも映像の権利が各クラブにも置かれ、接点として目に触れる状況を地域のメディアで柔軟につくれる形です。
関連記事
- プロ野球とJリーグ、コロナ禍でより運営が厳しいのはどっち? カギを握る「コロナ回帰率」とは
感染拡大防止の観点から無観客試合を続けていたが、観客動員を始めたプロスポーツ。しかし、内情を見ると野球とサッカーで明暗が分かれたようだ。詳しく数字を見ると、コアなファンの数が命運を分けたようだ。さいたまブロンコスオーナー/横浜DeNAベイスターズ初代球団社長の池田純氏が解説する。 - ベイスターズ初代球団社長が語る、コロナ時代に必要な「変える力」とプロ野球生き残りの道
新型コロナウイルスの影響で窮地に立たされるプロスポーツビジネス。「コロナの時代」を見据えた経営に必要なものとは? 親会社や前例にとらわれない「変える力」こそ必要だと、埼玉ブロンコスオーナー/横浜DeNAベイスターズ初代球団社長、池田純氏が解説する - 新型コロナで延期となった東京五輪 「無観客」でも分かれた各界の対応と問われる「スポーツビジネス」の本質
新型コロナウイルスの影響で延期が決まった東京五輪・パラリンピック。図らずとも、大相撲やプロ野球などの各スポーツが、どの方向を向いているのかが可視化された。埼玉ブロンコスオーナー/横浜DeNAベイスターズ初代球団社長、池田純氏が解説する。 - ここにきて、プロ野球以外でもIT企業が続々とスポーツビジネスに参入するワケ 「ITスポーツ第2世代」の狙いに迫る
楽天、ソフトバンク、DeNAに続き、IT企業のプロスポーツ参入が増えている。メルカリ、ミクシィ、サイバーエージェントら「ITスポーツ第2世代」の狙いはどこにあるのだろうか? そして、どのような未来が待っているのか? 横浜DeNAベイスターズの初代球団社長、池田純氏が斬る。 - テレワークで剥がれた“化けの皮” 日本企業は過大な「ツケ」を払うときが来た
テレワークで表面化した、マネジメント、紙とハンコ、コミュニケーションなどに関するさまざまな課題。しかしそれは、果たしてテレワークだけが悪いのか? 筆者は日本企業がなおざりにしてきた「ツケ」が顕在化しただけだと喝破する。 - 話題の「社員PC監視ツール」がテレワークを骨抜きにしてしまう、根本的理由
テレワークで従業員がサボらず仕事しているかを“監視”するシステムが話題になった。テレワークは本来「成果」を出すためなら「働く場所」を問わない制度のはず。こうしたシステムが出てくれば、テレワークが骨抜きになってしまい、生産性を高める「成果主義」が定着しない、と新田龍氏は指摘する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.