なぜ、社長の指示は「突然」降ってくるのか 人事が知るべき経営者のホンネとは?:重要性増す経営陣との距離感(2/5 ページ)
人事と経営陣の距離感は重要だ。変化する事業環境に対応するため、時として、人事は経営陣の代弁者となったり、アドバイザーになったりする必要がある。では、どんなことを人事は心掛ければよいのか。
筆者は、このようなギャップは、人事と経営者との「視点の違い」から生まれるものだと考えています。当たり前のことですが、経営者は「自分たちの組織がどうあるべきか」を常に考えています。現場の人事にはなかなか入ってこない情報を入手することもあるでしょう。また経営者は、組織の中で最も高い「経営視点」に立ち、日頃から経営のことを考えています。多くの経営者は仕事以外の時間にも、常に考えを巡らせているはずです。
経営者は、時として、社内が混乱しても大きく改革する決断しなければならないこともあります。現場の人事からは突然に降って湧いたように見える指示も、じつは多くの時間を割いて、さまざまな視点で考え、決断している結果です。この「視点の違い」が、「突然」に思える指示につながっているのです。
人事が行うべきポイント:背景の確認
このような経営者の指示に対して、人事が行うべきポイントは「経営者が指示をする背景の確認」です。経営者がなぜこのような指示に至ったのか。その背景をしっかりと確認しなければ、経営者の意図と異なる施策を実行してしまうかもしれません。
例えば「新卒採用を30人増やす」という指示の背景はどこにあるのでしょうか。恐らく単純に社内のリソースが足りないから、という背景だけはないはずです。近いうちに新規事業を拡大していくからなのか、サポート部門の業務拡充が必要だからなのか、もしかしたら社員の年齢構成のバランスを変えるためなのかもしれません。このような背景の違いにより、採用する人物像や必要なコンピテンシーも変わってくるはずです。
経営者は、この背景を伝えることを端折ってしまうことがよくあります。経営者はとても忙しいですし、人事は当然背景を理解しているものだと思っているかもしれません。はたまた、もしかしたら社内ではまだ開示できない事業計画が背景にあるのかもしれません。コロナ禍によりコミュニケーションが希薄になっているからこそ、人事から経営者に「その背景を確認させてください」としっかりと伝え、意思疎通を取ることがとても重要です。
経営者が本音をさらけ出せない理由
経営者は、カッコつけたがるものです。特に、周囲から経営者然とした立ち振る舞いや言動を求められる人は、どうしてもそのような癖がつきがちです。その結果、経営者が本当にやりたいことや、真意や本音が人事に伝わってこないこともあります。経営者も一人の人間です。普通の社員と同じように好き嫌いもあるはずです。しかし、立場上、自身の本音をさらけ出すことは、とても難しいのです。
人事が、経営者の本音を理解できずに、さまざまな人事施策を思うままに実施したらどうなるでしょう。経営者が意図していない人事施策になってしまったり、経営者の意図が社員に正しく伝わらなかったりするかもしれません。
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