ボーナスは“特権”か 「低賃金で何が悪い?」正当化され続ける非正規格差:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
非正規社員の賞与や退職金を巡る判決があったが、すぐに議論は鎮火した。女性を低賃金で雇うことが当たり前になった時代から変わっていない。非正規労働者は増加し、貧困問題に発展しているのに「自己責任」で片付けてきた。雇用問題の在り方から議論が必要だ。
賞与や退職金は「正社員の特権」なのか?
その是非を巡る判決が、先週報じられました。しかし、あっという間に“火種”は鎮火。本来であれば、
「なんで10年も勤めてんのに、非正規ってだけで退職金、出ないんだよ!」
「なんで同じ仕事してんのに、非正規ってだけでボーナスもらえないんだよ!」
「正社員ってそんなに偉いのかよ! 非正規ってそんなにダメなのかよ!」
などなど、不条理な“差別”へ不満は山積しているはずなのに、当事者たちの声が、「まぁ、同一労働同一賃金の法律もあるわけだしさ、今後が見物だよな」といった斜めから見ている人たちの声でかき消されてしまった。
そうです。これまでと全く一緒です。2008年の年末に日比谷公園につくられた「年越し派遣村」で貧困が可視化された頃までは、「弱い人を最優先で救済する」という人間倫理の根幹が共有されていたのに、グローバル化という言葉の台頭とともに、非正規問題が話題になるのは“何か”具体的な問題が起きた時ばかりで。時間が過ぎれば「何事もなかった」かのような空気が、社会にまん延するようになってしまいました。
19年の1年間で、非正規労働者は前年より45万人増えて2165万人。働く人全体に占める割合も過去最高の38.3%(総務省「労働力調査」)。非正規社員男性の生涯賃金は約6200万円で、正社員の4分の1(正社員男性=約2億3200万円、みずほ総合研究所の試算)。この格差の最大の原因が賞与と退職金です。
もっとも、ジョブ型でない日本独特の働き方では、年齢や経験などで職能給があるため、同一労働同一賃金を実行するのは容易なことではないかもしれません。しかしながら、単なる雇用形態の違いで、賃金格差、待遇格差を作り出したのは企業の側です。
ましてや、「自発的に非正規になっている人が多い」という人たちがいますが、働く人の4割が非正規という状況で、自発的か否かを論じることにいったいどんな意味があるのか。私には理解できません。
今回の判決については、別のメディアで書きましたので(「正社員」という特権と使い捨てされる「娘」の苦悩)、こちらでは「非正規=低賃金が当たり前になっているワケ」について書きます。
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