ボーナスは“特権”か 「低賃金で何が悪い?」正当化され続ける非正規格差:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
非正規社員の賞与や退職金を巡る判決があったが、すぐに議論は鎮火した。女性を低賃金で雇うことが当たり前になった時代から変わっていない。非正規労働者は増加し、貧困問題に発展しているのに「自己責任」で片付けてきた。雇用問題の在り方から議論が必要だ。
非正規雇用の在り方とは?
厄介なのは、低賃金問題に「女性」という属性がつくと、いつの間にかシングルマザー問題にすり替わってしまうこと。確かに、シングルマザーの貧困問題は深刻です。非正規で働くシングルマザーは多いです。しかし、問題の根っこは、「非正規=低賃金」を容認し続けていることにあって、シングルマザーに問題があるわけじゃない。……当たり前です。
とにもかくにも、非正規が「低賃金」「不安定」なのは臨時工時代から続いていて、同一労働同一賃金が法律に明記されても、「均衡」という2文字がある限り、差別はなくなりません(関連記事:賃金は減り、リストラが加速…… ミドル社員を脅かす「同一労働同一賃金」の新時代)。
差別をなくすには、「非正規雇用は原則禁止」にするしかないのです。
例えば欧州では、有期雇用にできる場合の制約を詳細に決めていて、期間も限られています。日本のように、非正規で何年も雇い続けることができない上に、非正規は「企業が必要な時だけ雇用できる」というメリットを企業に与えているとの認識から、非正規雇用には不安定雇用手当があり、正社員より1割程度高い賃金を支払うのが“常識”です。
二言目には「世界は、世界は〜〜」というのですから、「人」を大切にする世界の流れも、その「世界は〜」に入れなくてどうするというのか。非正規雇用問題は、その在り方から議論し、性差別から続いている「差別」のない、誰もが「働く喜び」を享受できる社会になってほしいものです。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)
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