総務のサイフ、コロナで大激変 社員に「あり得ない」とは言わせない、予算を投じるべき最優先課題:総務プロの「攻めと守り」(2/4 ページ)
これまで総務部のコスト削減というと、庶務関連など「非常に小さいパイ」だったので、経営効果は限定的だった。しかし新型コロナの影響で、そんな総務のサイフの中身が変化している。
多くの企業に足元でヒアリングしている限りでは、その大半が予算戦略を見直す必要性を感じている、または現在進行形で議論しているという状況です。今、予算戦略を練っている会社が多いということは、オフィス市場の変化は21年以降に本格化していくと予測できます。
総務は社内的には「サービスおよび管理部門」という位置付けですが、対外的には外部へ業務を委託する、発注者の立場です。一人の総務の方が年間に発注する(または関与する)額と、日本全国の総務の名刺を持っている人の数(JFMAによると、約30万人といわれています)から推定すると、数十兆円規模になります(オフィスや不動産の発注コストを含む)。
この金額の内訳が動くということは、対応する市場の構成も変わることを意味しています。それほど大きな経済インパクトを起こす中心にいるのが、企業内(公共団体含む)の総務なのです。
ウィズ/アフターコロナで、多くの企業が議論している一例として、「オフィスの再定義」が挙げられます。連載第1回で述べた通り、昭和の時代からオフィスは「行って仕事をする場所」であり、終わったら自宅へ帰るというものでした。テクノロジーの進歩に伴い、在宅勤務やシェアオフィス、ワーケーションなどさまざまな働き方が出てきても、「カルチャー的に難しい」「予算的に厳しい」「やっぱりFace to Faceだよね」といった精神論が勝り、なかなか改革が進まなかった企業も少なくありません。
しかし今回、強制的な働き方改革によって「やってみたら、便利ではないか」「テクノロジーは結構すごい」と気付きが生まれました。経営陣もこのことを実感したので「オフィスって何だ? 最低限必要な機能だけでいいのでは?」と再考が進みます。そんな自然な流れは、読者の皆さまもご存じの通りです。
25年以上、総務に携わってきた筆者“総務プロ”の視点でみると、総務サイフの大出費(固定費と思われていた)の主役である本社集約型のオフィスコストは大幅に見直され、間違いなく下がると思います。個人的観測ですが、集約型オフィスにかける総務予算は、向こう3年間で30〜50%程度は落ちると推測します。
そこで、まずはコロナで打撃を受けた企業の財務基盤を不動産の観点できちんと調整し、ROA(総資産利益率)を改善することが、会社経費の最大の消費者である総務部の責務です。つまり、21年から3〜5年間の総務がとるべき「守り」の部分は、オフィスコストのリバランスとROAへの貢献に尽きます。
企業内の働き方改革のスピードによって、難易度は変わります。富士通や日立など、ビフォーコロナから取り組んでいる企業にとっては追い風になるでしょう。一方、コロナの影響で、ものすごくタフなスケジュールで改革を余儀なくされている企業にとっては、きつい3年間となりそうです。
いずれにしても総務がすべきことは、自社の状況を客観的に捉え、まずは「守り」を固めること。そして「攻め」るために大きなベースラインの予算を作り出すことです。
では、予算を投入すべき「攻め」の部分は?
では、作り出した予算を投入する攻めの部分は何でしょうか。
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