総務のサイフ、コロナで大激変 社員に「あり得ない」とは言わせない、予算を投じるべき最優先課題:総務プロの「攻めと守り」(3/4 ページ)
これまで総務部のコスト削減というと、庶務関連など「非常に小さいパイ」だったので、経営効果は限定的だった。しかし新型コロナの影響で、そんな総務のサイフの中身が変化している。
集約型オフィスにかける総務予算が大幅に下がった分は、必然的にある分野へ分散(投資)されます。経営の状況により、さまざまだとは思いますが、絶対的に優先すべきは「社員への投資」だと筆者は考えます。
働き方変革は社員個々にとっても簡単にできてしまう人も一定数いますが、大半は苦痛を伴います。Zoom会議の連続、家に長くいるがゆえの家庭不和や健康障害、リモート管理に慣れていない上司も多く、悪気はなくとも社員が現在も、そして今後さらに過労業務に追い込まれる──といったことは、火を見るより明らかです。
それぞれ個々がテクノロジーによる生産性アップを感じ、同じ時間にできることが今までより多くなっていることに気付きながら、働く時間は一定に保とうとする傾向があります。これが大きなわな(健康被害)なのです。
本来なら1日5時間も働けばもう立派に想定していた仕事よりも多くこなせている人も、実は社内に多く出現しているはずです。その社員に対して“8時間働く監視制度”は無理があります。短距離走でタイムを伸ばしている人がその到達点(その日の目標)にすでに到着しているのに「時間はまだ残っている、まだ走れ!」と言っているようなものです。これでは体を壊してしまいます。
生産性はそんな簡単に爆上げできるものではなく、そのようなことをしていると体(心身とも)が悲鳴をあげるまで気付かないのです。筆者自身も“テレワーク人間”になって2年後くらいに実体験しました。そんな現象がいま社内でも起き始めている企業も多いと推測しますし、今後さらに深刻化するでしょう。
この状況で、総務部がオフィスを半分にして不動産コストを削減し、経営から「ほめられている」ということは、他の社員からするとあり得ないことです。そんなことをしては総務部のイメージも悪くなり、経営への信頼も揺らぎます。総務としてまずやってはいけないことです。
総務がいま攻めるべき部分は社員へのサービス充実、これはオフィス内だけなく在宅、シェアオフィス、ワーケーション、生活支援(公私混同でもOK)まで含みます。企業は働く社員のために今までにない次元で今までにない方向に「お金」を使う必要性が出てきます。
そのための財源はすでに前述の不動産コストの削減で、社員1人当たり年間30万円相当(不動産部分の50%)は担保されているので、優先順位を経営と相談しながらいろいろと計画を立てられます。ここが総務のチャンスです。
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