総務のサイフ、コロナで大激変 社員に「あり得ない」とは言わせない、予算を投じるべき最優先課題:総務プロの「攻めと守り」(4/4 ページ)
これまで総務部のコスト削減というと、庶務関連など「非常に小さいパイ」だったので、経営効果は限定的だった。しかし新型コロナの影響で、そんな総務のサイフの中身が変化している。
1人当たり30万円の社員サービス、これは月に換算すると1人当たり2万5000円の財源です。これほどの予算をどう使うかと考えることができるのは、私自身、25年間の総務経験の中でも初めてのことです。先輩方の話を聞く限りでも「戦後初めて」という意見が大半です。
直近のリーマンショックのときは不動産削減額をほぼ経営から没収されましたが、それはリストラが並行して起きていたので当然の論理であり、会社が生き残るためには仕方がないと、社員も納得できました。
しかし今回は違います。改革を余儀なくされ、当事者として苦労している社員は、コスト削減だけでは納得しません。給与だけではなく社員に投資する姿勢、働き方の多様性を支援する仕組みがあるかどうかで、会社が選ばれる時代になるでしょう。こうした動きを察知して、GAFAなどはすでにいろいろな手を打っているのもニュースで見かける通りです。
これほどの財源で総務が攻めると、「そこまで会社がしてくれるんですか?」と社員にいわれるほど、次元の違うサービスを社員に提供できますし、さらにDXを含め、IT投資も増やせるようになります。
ITへの投資は、1つのサブスクサービスだと、1人当たり月額500円〜1000円程度が一般的。総務コストと比べると桁が違うくらいに安く、効果が桁違いに大きいです。例えば、前述の在宅のための支援サービス、シェアオフィス、ワーケーションなど多岐に予算を振り分けられます。これは総務サイフから「ITサイフ」「人事・福利厚生サイフ」への予算の移動を意味します。この仕掛け人が攻める総務ということです。
次回(第4回)は、攻めるための前提知識、市場の理解、そして他社のマネではなく自分の会社らしい投資戦略をどのように見つけていくのかをお話しいたします。
著者紹介:金英範
株式会社 Hite & Co.代表取締役社長。「総務から社員を元気に、会社を元気に!」がモットー。25年以上に渡り、日系・外資系大企業の計7社にて総務・ファシリティマネジメントを実務経験してきた“総務プロ”。
インハウス業務とサービスプロバイダーの両方の立場から、企業の不動産戦略や社員働き方変化に伴うオフィス変革&再構築を主軸に、独自のイノベーティブな手法でファシリティコストの大幅な削減と同時に社員サービスの向上など、スタートアップから大企業まで幅広く実践してきた。
JFMAやコアネットなどの業界団体でのリーダーシップ、企業総務部への戦略コンサルティングの実績も持つ。Master of Corporate Real Estate(MCR)認定ファシリティマネジャー、一級建築士の資格を保有。
関連記事
- 総務の仕事は「目立たない」「感謝されない」……戦後最大の「変わるチャンス」到来 36の業務から「求められる役割」を考える
会社を運営するためのベースとなる縁の下の裏方仕事、雑用係というイメージの総務。その中でも「目立つ」仕事は何なのか。 - コロナ時代の「オフィス再構築」が、ただ「縮小」では終わらない理由 総務にとってチャンスか、ピンチか
2001年前後のITバブル、08年のリーマンショックなど、環境変化が起きると必ずといっていいほど、オフィスの再構築が起きてきた。新型コロナが引き起こした「オフィスの再構築」も定番の流れといえるが、特殊な側面もある。 - オフィス出社は5人だけ! リモート主体で社員700人を支える総務業務のコツとは?
ほとんどの社員がフルリモートのキャスター。オフィス出社しているのは5人だけだというその他、700人の社員がフルリモート勤務の同社だが、総務業務などはどのようにこなしているのだろうか。リモートワークのコツと合わせて聞いた。 - 「オフィス、もういらないかも?」 と思えるフルリモート企業の成功事例 カギは「ワイワイ・ガヤガヤ感」
新型コロナの影響で一気に広まったリモートワーク。さまざまな課題が浮き彫りになっているが、中でも「ワイワイ・ガヤガヤ感」を醸成し、どこにいても同じコミュニケーションを取れるようにすることは重要だ。では、どうすればいいのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.