島忠へのTOB どちらに転んでもニトリにはメリットしかない理由:王手飛車取り(1/4 ページ)
ニトリが島忠の買収に名乗りを上げた。筆者は仮に買収できないとしても、ニトリにとっては大きなメリットがあると指摘する。その姿は、かつてのドン・キホーテと重なるという。
ニトリが島忠の買収に名乗りを上げた。
10月2日にホームセンター業界2位のDCMが、業界7位の島忠を株式公開買付(TOB)すると発表。島忠側も同日、TOBへの賛同を表明。2社の直近売り上げを単純合計すると5836億円。新型コロナウイルスの影響で、ホームセンター各社が販売好調で大幅に業績を改善させているなか、友好的なTOBによって、業界首位のカインズ(売上高4410億円)を大きく引き離すグループが誕生する目前だった。
しかし、10月29日、ニトリは島忠へのTOBを表明。買付価格を1株当たり5500円とした。これは、DCMの買付価格(4200円)を1300円上回る。ニトリ側はあくまで友好的としているが、TOB合戦が勃発した形だ。
すでに「家具」のニトリから脱却
「お、ねだん以上。」で知られているニトリは、国内の家具小売企業としてはすでに圧倒的な存在になっている。
家具需要を刺激した新型コロナ流行前の2020年2月期時点で、6423億円を売り上げ、営業利益は1000億円を超えていた。国内家具小売企業としては突出した存在である。
北海道での家具小売からスタートしたニトリは「他社と同じ品質の商品を他社の7〜8割の価格で販売する」(ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長)調達力を磨き続けて、低価格ながら他社よりも粗利率が高いビジネスモデルを作り上げている。
ニトリは“家具”小売のイメージが依然強い。しかし、現在の売り上げに占める家具の比率は4割に満たない。「ホームファッション」関連の小売企業であり、独自のディスカウント業態としての進化を遂げているのが実態だ。
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