島忠へのTOB どちらに転んでもニトリにはメリットしかない理由:王手飛車取り(2/4 ページ)
ニトリが島忠の買収に名乗りを上げた。筆者は仮に買収できないとしても、ニトリにとっては大きなメリットがあると指摘する。その姿は、かつてのドン・キホーテと重なるという。
ホームセンターにとっては脅威でしかない
10月2日に発表した21年2月期の第2四半期決算では、新型コロナ流行による家具需要や家庭内用品需要の高まりを受け、前年同期比12.7%増収となる売上高3624億円、営業利益は同45.0%増となる805億円を計上し、通期で35年連続での増収増益を確実にしている。
そんなニトリは、ホームセンターの脅威になっている。
ホームセンターは、DIYや園芸、農業向けの専門店業態だ。しかし、近年のDCMが強化しているプライベートブランド(PB)商品は、日用品が中心だ。市場規模の限られたマーケットにとどまらず、日用品などで一般消費者を取り込む展開を行っている。“規模の経済”を実現するため、提携や合併などによって事業規模を拡大させる戦略を進めている。今回のDCMによる島忠買収にはそんな背景もある。
ただ、この流れは、ホームセンターが本来のターゲットから離れてしまい、一般消費者向けのディスカウント業態と化していることも意味する。
筆者は10月、島根県に本社を置くホームセンターチェーン「ジュンテンドー」の決算説明会に参加した。同社はホームセンター本来のマーチャンダイジング(商品政策)回帰を掲げて、農業関連の商品強化に近年取り組んでいる。
決算説明会の質疑応答の中でこんなやりとりがあった。DCMのように日用品のPB商品を強化し、合併による拡大路線が進んでいる業界動向を踏まえ、自社としてどう対処していくかと質問されると、飯塚正社長は「(日用品でのPB展開は)勝手にやってくれ。DCMはホームセンターだと思っていない」とコメントしている。競合となる他社のホームセンターが、すでに日用品のディスカウンターになっているという認識だ。
また、筆者は10月15日に行われたコーナン商事の決算説明会にも参加した。同社は、プロ向け業態の強化を近年進めている。また、ニトリHDの似鳥会長が社外取締役となっている。コーナン商事の疋田直太郎社長は、ニトリがホームセンターの日用品販売にとって脅威になってくるとの見解を示していた。
では、大手ホームセンター各社とのニトリの収益率を比較してみよう。
ニトリの売上高粗利率が55.2%なのに対し、島忠は33.7%、コメリは32.1%、コーナン商事は40.8%、DCMは34.6%、ナフコは32.9%となっている。
粗利率の違いは圧倒的だ。一般消費者に対して、価格訴求でニトリと勝負した場合に、ホームセンターが勝てる余地は少ない。
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