ディズニー決算から考える、厚労省発表「コロナ解雇7万人」が“それどころではない”ワケ:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)
厚生労働省は6日、コロナ禍が関連した解雇・雇い止めが今年2月からの累計で7万人を超えたことを明らかにした。解雇ペースは緩やかになっているというが、これほどまでに影響は小さいと本当にいえるのだろうか。
非正規雇用者へのあおり色濃く
コロナにおける労働市場の影響を把握するうえでは、「コロナ解雇・雇い止めか、そうでないか」という定性的な判断も一部入る厚労省の統計ではなく、総務省が毎月公表している労働力調査から確認することが適切といえるだろう。
これによれば、コロナ解雇・雇い止めペースが鈍化したとする厚労省の統計と異なり、完全失業者は2月から8カ月連続で増加していることが分かる。その増加幅は実に42万人にのぼり、増加に最も寄与した要因が勤め先や事業都合による退職の前年比+19万人。新たな求職のための離職が+9万人(収入のために求職する場合を含む)、そして自発的な離職が前年比+6万人であった。
正社員と非正規社員を比較すると、コロナ禍の影響の大部分は非正規社員の雇用調整によるものが大きく、正社員に関しては、全体としてみれば前年比で増加していることが分かる。
とりわけ、これは女性への影響が大きい。非正規雇用の割合が55%と男性の2.45倍と高いことから、性別でみると女性がコロナ禍によって退職を余儀なくされているケースが多いとみられる。
確かに、失業者の増加数の全てがコロナ禍の影響によるものとはいえない。しかし、前年同月比水準で増加幅が拡大したのは、いずれも20年2月が境となっている。そうすると、失業者の急増要因には、コロナ禍関連の影響が大部分を占めていることに疑う余地はないだろう。また、失業に至らなかったケースでも、減給や関係企業への出向・配置の転換といった労働力統計にもあらわれてこない。雇用は維持されたとしても、家計への影響が拡大している懸念もある。
9日には米ファイザー社が新型コロナウイルスのワクチン臨床実験で高い予防効果を示し、コロナ禍終息への期待感が高まった。日経平均株価は11日にバブル崩壊後最高値の2万5338円52銭で引けている。しかし、コロナ禍の終息するタイミングは未だ不明確で、足下の労働市場、ひいては実体経済が軟調であることに変わりはない。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
Twitterはこちら
関連記事
- “ピーク比75%減” 渋谷ハロウィンから考える「コロナと東京一極集中」
数年前から慣例化している「渋谷ハロウィン」であるが、今年の渋谷ハロウィンはコロナ感染リスクが高く、区長直々の自粛呼びかけの効果もあり、例年と比較すれば相当低い人出となっていたという。コロナ禍で人の動きが抑制された渋谷ハロウィンから視点を広げて、国内に目を向けてみよう。コロナ禍で人々の動きは抑制されたのだろうか。 - 新ワザ「無限くら寿司」の本質が「マスク転売と同じ」と断言できるワケ
「トリキの錬金術」が規制されてまもなく、新たなGo To Eatの裏技「“無限”くら寿司」が発見された。くら寿司側が公式サイトで大きく画像を掲示しており、利用を促す姿勢が目立つ。しかし、実質無料となる理由は、政府が財源を支出しているからに他ならない。政府が懐を痛めるということは、私たちの納めた税金がこのような“裏技”に注ぎ込まれるということを意味する。 - 全てのビジネスパーソンが、東証の“完璧すぎる記者会見”を見るべき理由
10月1日に、東京証券取引所でシステム障害が発生した。しかし、システム障害当日の夜に実施された記者会見は、「完璧」といっても過言ではない内容であり、ビジネスパーソンにとって見習いたい点が数多くみられた。あの会見には、東証のどんな優れたポイントが隠れていたのだろうか。 - 「SBIや三菱UFJも被弾」相次ぐ不正出金のウラに隠れたもう1つの危ない現実
9月7日のドコモ口座による銀行預金の不正出金問題がくすぶり続けている中、16日にはSBI証券の顧客口座から、不正に計9860万円が引き出される事件が発生した。今回は、これらの不正出金問題を振り返りつつ、巷で見過ごされがちなもう1つの危ない現実についても確認したい。 - JALの大幅減収決算が示唆、コロナ影響はリーマンショックの2倍以上?
需要急減により窮地に立たされている空運業であるが、かつては不景気に強い傾向があったことをご存知だろうか。そうであるとすれば、なぜ今回の不景気では最も打撃を被った業界の1つに数えられることとなったのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.