「大炎上」の果てに降格も…… メールやSlackで怒り狂う人々が後を絶たない理由:トラブルを避けるには?(2/4 ページ)
在宅勤務の普及でメールやSlackでやりとりをするシーンが増えた。一方、使い方を間違えると大炎上してしまう。筆者が実体験を踏まえてアドバイスする。
なぜ、ここまで怒ってしまうのか
なぜ人々は、デジタル通信でここまで怒ってしまうのか。この仕組みについて掘り下げて考えてみると、リモートワークの際に注意すべき示唆がみてとれる。そして、少なからぬ「アンチ・リモートワーク派」が、現場回帰を渇望する構造問題も浮き彫りになる。というのも、デジタル通信には2つの特徴があるからだ。
まず、デジタル通信は「一方的」である。メールやSlackで業務連絡を受け取った時点で、それが単なる情報共有でない限りは、返信やなにかしらの対応を求められる。すなわち、そのデジタル通信には、暗に「これ長文だけど読めよ」「そして返事しろよ」「このメールが受信箱に届いていることに自分で気づいてちゃんと開けよ」「どんな期限でどんな対応をしないといけないかもメールを開かないとわからないからよろしくね」という送り手の期待値が全て内包されているのだ。
その「一方性」はある種の強引さを意味するが、受け取り側が上司や顧客だった場合にそれはどう受け止められるだろうか。その強引さは、メール対応に要する相手の時間と労力への無配慮、すなわち無礼さにつながる。ここにデジタル通信が炎上を誘発する一因がある。
なお、筆者が本稿で「デジタル通信」を「デジタル対話」と表現しなかった理由もここにある。一方的な通信は、対話(質問、反論、時間の共有)の要素をもっていない。
オムニチャネル性とは
デジタル通信の2つ目の特徴として、「オムニチャネル性」がある。ここでいうオムニチャネルとは、PCがなくてもスマホでアクセス可能なだけでなく(スマホがなくてもPCでアクセスできることも指す)、PC・スマホの両方がなくてもネット環境と他者のタブレットさえあればログインしてアクセスできることを意味する。すなわち、特定端末に依存しないアクセスの超利便性のことだ。
スマホが浸透したことで本格的なオムニチャネル時代となった。デジタル通信は、相手がいつどこにいても受信できてしまうし、設定次第ではプッシュ通知で即時にアラートが鳴ることで受信者の注意を一瞬以上奪ってしまう。
あなたが暇を持て余していたら構わないが、週末に恋人と記念日を祝うディナーのひとときだったり、一世一代の大勝負となる会議や接待の途中だったり、がんで倒れた肉親の末期に立ち会っている際中だったらどう思うだろう? そして、何事かと思いそのメールやSlackをとっさに開けてみると、「明後日の会議が12時からはじまるので、リマインドのご連絡です。確認のご返信お願いします」という内容だったらどうだろうか? 知らない携帯番号からの着信があったので、でてみると月末に予約していたレストランから「ご注文いただいたコースの内容に変更があり、食後のデザートはメロンではなく抹茶プリンになりますが大丈夫ですか?」と伝えられたらどうだろう? 「抹茶プリンで大丈夫。すぐに教えてくれてありがとう」とはいかないだろう。
時と場所を選ばず、即時に相手側の時間と注意を奪うオムニチャネル性は、招かれもしないのに玄関に乗り込んでくる訪問販売以上に「押しつけがまし」く、送信側の完全なる自己都合で受信側の課題優先順位を瞬時に乱すという「無神経」でもある。場合によっては、「『あなたの肉親の末期』と『抹茶プリン変更』の優先度合いを同列にするリスクが理論上はあるけど、私はとくに気にしませんでした」と受信側に伝えているに等しいのだ。
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