中国が覇権奪取に利用? 「QRコード」がコロナ禍で世界から注目されるワケ:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
G20サミットで中国の習近平国家主席が「QRコード」に言及。新型コロナ対策などで主導権を握ろうとしている。日本で生まれたQRコードは、コロナ禍を機に、中国に限らず世界で利用が進む。感染対策や非接触サービスをきっかけに、利用範囲が広がっていきそうだ。
中国が胸を張る、感染拡大防止へのQRコード利用
まず、もはや言うまでもないが、QRコードは日本で生まれた技術である。1994年に自動車部品メーカーであるデンソーが開発し、日本の工場での生産管理用に使われていた技術だ。それが、徐々にではあるが、一般に普及するようになった。
そんなQRコードが今またスポットライトを浴びているのには訳がある。新型コロナの蔓延である。
特に中国では新型コロナ対策にQRコードが積極的に使われていた。もともとスマホ決済などでQRコードが普及していることもあって、国民にとっても導入には違和感がなかったようだ。
国民は、健康状態に応じて色分けされたQRコードをスマホで持ち歩き、公共機関などを使う際にそれをかざすようにすることで、新型コロナの拡散を阻止しようとしていた。
アリババやテンセントといった中国IT企業が運営するQRコードの健康サービスは、登録が義務化されており、個人情報に加えて、移動履歴や感染者との接触、体調などを登録する。それによって赤、黄色、緑の信号のような色がQRコードに付けられるのである。
この施策が感染拡大を食い止めるのに効果があったと習近平は見ている。それゆえに、そのシステムを中国主導で世界に広げたいようで、わざわざ世界中が注目するG20で言及した。また中国が開発しているワクチンも一緒に提供するようなニュアンスで話をしている。おそらくQRコードについては、互換性などの理由をかざして、中国のシステムをそのまま導入させたいという目論見(もくろみ)もあったのだろう。
ちなみにアリババやテンセントは広範囲なモバイル決済サービスを提供していて、大量の個人情報を収集することで知られており、また中国には、全ての企業の持つ情報を中国当局が強制的に収集できる国家情報法もある。つまり、新型コロナ対策で集められた情報は全て中国当局に筒抜けになる恐れがある。事実、米ニューヨーク・タイムズ紙の検証では、アリババの新型コロナアプリでは、個人のデータが中国警察にも共有されることが分かっている。
そうしたリスクを知ってか知らでか、現時点では習近平の発言に呼応した首脳の話は聞こえてこない。
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