JR九州の新型観光列車「36ぷらす3」の“短所を生かす”工夫 都市間移動を楽しくする仕掛けとは:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)
JR九州の新型観光列車「36ぷらす3」に試乗した。観光列車先駆者である同社の新型車両は、車窓を楽しむ列車ではない。窓が小さく、景色を見せられない分、車内でのおもてなしに力を入れている。観光都市間を移動する空間を楽しくする、これまでとは違う列車だ。
途中の停車時間を長く確保
もちろん、車窓の魅力はゼロではない。幹線とはいえ九州の景色だ。そうした場所では長時間停車して、じっくり楽しんでもらおう、という行程になっている。例えば、私が試乗した土曜日「緑の路」コースは、宮崎空港発、宮崎発で日豊本線を走り、大分・別府に至る。九州東海岸ルートでありながら、海岸沿いの区間は短い。
景色の見せ場は宗太郎駅と重岡駅だ。日豊本線という幹線でありながら、下りは早朝6時台に1本だけ。上りは午前6時台と午後8時台に1本で、重岡駅はなぜか午後6時台に当駅発がある。つまり、列車だけで行こうものなら、早朝に訪れて下車すると夕方以降まで帰れない。そんな訪れにくい駅だけど、山に囲まれたとても良い雰囲気だ。「36ぷらす3」は宗太郎駅で日中に10分程度、重岡駅も20分程度停車する。この2つの駅を同時に訪問し景色を楽しめるだけでも、十分に価値のある行程になっている。
他の日程の観光停車時間は次の通り。木曜日「赤の路(博多〜鹿児島中央)」は玉名駅で約20分、熊本駅で約10分、牛ノ浜駅で約15分。金曜日「黒の路(鹿児島中央〜宮崎)」が大隅大川原駅で約50分、青井岳駅で約10分。土曜日は前述の通りで、日曜日「青の路(大分〜門司港〜博多)」が杵築駅で約15分、中津駅で約10分、門司港駅で約30分。月曜日「金の路(博多〜長崎)」は往路の佐賀駅で約13分、肥前浜駅で約60分、復路は佐賀駅で約17分。景色の良い駅もあればそれなりの駅もあるけれど、ほとんどの駅で特産品販売などが行われ、地域の人々と交流できる。
観光停車駅のほかは車内で過ごすことになる。しかし窓は小さい。その代わり食事付きプランが設定されている。食事なし座席飲み指定プランでもビュッフェで車内販売品を購入可能。また、車内では有料の体験イベント、無料のイベントが用意されている。私が乗った土曜日コースでは梅酒造り体験があった。
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