総務よ、安易に「オフライン回帰」を許すべからず 今、総務に求められる態度とは?:「総務」から会社を変える(3/3 ページ)
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。「オフライン」へと回帰する企業も多い中、もっとオンラインを使いこなす姿勢こそが総務に求められると豊田氏は指摘する。
表彰の演出にも使ってみると……
Web会議システムがもたらすのは、会議の効率化や活発化だけではない。例えば社内イベント、特に社内表彰などをWeb会議システムで行えば、表彰のタイミングで、表彰者に対して、社員がメッセージを発信できる。これまでやっていたような、オフラインで行う表彰式のような場では、できない演出だ。そのメッセージを表彰者、イベント参加者が見て、感動を深めていく――そんなことも期待できる。
筆者は仕事柄、講演をすることが多い。従来のオフラインで行う講演では、日本人は奥ゆかしいということもあるのか、ほとんど質問や意見は出なかった。しかし、ウェビナーとなるとかなり変わってくる。他人の目を気にすることなく、また、キーボードを打ち込めばすぐにメッセージが投げかけられるので、最近では数多くの意見や質問が寄せられるようになった。目立つことを好まない日本人にとっては、発言の場として、このチャット機能は大変親和性があるように思う。
リモートで難しいのが「タイミング」
Web会議システムでは、おのおのが自由に発言できるのがメリットであるが、裏を返せば、発言しているところに被せて発言することは、マナーとして好ましくない。そのためどこで発言を差し込むか、というタイミングの取り方が難しい。筆者もリモートで数多くの取材をしてきたが、コツは、相手の話し方の特徴を短時間で見極めることだといえる。また、話している内容から、「ここで終わるだろう」という直前に、発言を差し込むのだ。そうすることで、リモートでもテンポよく会話を進められるだろう。
総務に必要な姿勢は、「とにかく最大限使ってみる」
このように、Web会議システムには便利な点が数多く存在する。慣れていないと、最小限の機能のみ使い、その場をやり過ごすことになりがちである。もっと、好奇心を持って、いろいろな機能を使い倒してみることが、特に、総務にとっては必要な姿勢であると筆者は考える。
現場の仕事の効率化を支援する総務としては、自ら、いろいろな機能を試し、その使い方と、使うことのメリットを社内に告知する役目があるはずだ。そして、あらゆる機能を使い倒し、その上で、やはりリアルの場のほうが優れているものは何なのか、それも含めて、社内に告知していく――こうした態度が望ましい。
どちらが良い・悪いではなく、どのようなケースだとどちらが優れており、こちらを使いましょう、そんな具体的なビジネスのシーンに照らし合わせて説明していく。総務で必要な姿勢は、食わず嫌いはあり得ず、一度食べたら、骨までしゃぶる、そんな姿勢である。
著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)
株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)、『経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター)
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