ビジネスパーソンのためのSaaS KPI入門:SaaSビジネスで用いられるARR、ARPU あなたは説明できますか?(3/5 ページ)
ビジネス用語として定着した“SaaS”ですが、このビジネスを理解する上で欠かせないのが「SaaS KPI」と呼ばれる指標です。この記事では、SaaSビジネスにおいて、国内トップランナーであるfreeeの決算説明資料を基に、ビジネスパーソンが最低限押さえておきたいSaaS KPIの解説を行っていきます。
疑問2――SaaS KPIは何があり、どのように確認すればよいのか?
A SaaSビジネスを捉える上で、ARRの分解要素をはじめとした多くのKPIがあります。上場SaaS企業のKPI公表状況は以下の表組の通りです。
表を見ての通り、上場企業においても各SaaS KPIは任意開示となっており、決まった公表形態があるわけではありません。先行してSaaSが発展をしてきた米国では、コスト構造の説明などに一定の型がありますが、国内SaaS企業においては2019年頃からKPIの詳細な開示が行われつつあり、各社徐々に開示を進めている状況です。
これらのKPIについては、各社が決算時に公表を行う「決算説明資料」の中に記載があるケースがほとんどです。気になるSaaS企業があれば、各社のIRページからこの資料を読み込んでいくことで詳細を確認可能です。
なお、未上場企業においては、KPI自体の開示義務がなく、当事者もしくは、ベンチャーキャピタルなどの投資家のみが知り得る情報となります。
freee原さんの視点
freeeはIPO当時より海外投資家比率が高く、それゆえ、開示内容をグローバル水準に合わせてきました。SaaS KPIの開示を率先して行ってきたことは投資家から好感を得ました。
各社の開示が進む中で、SaaS KPIを他社と単純に横比較するケースも見受けられますが、サービスの顧客対象が大企業向けなのか、中小企業向けなのか、などの違いにより絶対値の水準は異なるため、一律的に比べることができない場合もあります。どちらかといえば、その企業のKPIが時系列でどのように変化をしているかなどに注目した方が、よりビジネスの動向を把握することができると思います。
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