ビジネスパーソンのためのSaaS KPI入門:SaaSビジネスで用いられるARR、ARPU あなたは説明できますか?(2/5 ページ)
ビジネス用語として定着した“SaaS”ですが、このビジネスを理解する上で欠かせないのが「SaaS KPI」と呼ばれる指標です。この記事では、SaaSビジネスにおいて、国内トップランナーであるfreeeの決算説明資料を基に、ビジネスパーソンが最低限押さえておきたいSaaS KPIの解説を行っていきます。
疑問1――なぜ、SaaSでは独自のKPIが使われるの?
A SaaSは予見可能性が高い、ストック型ビジネスだから
SaaSは、BtoB向けの月額制サブスクリプションモデルであることが一般的です。解約されない限りにおいては、継続的に収入が積みあがっていくため、従来の売り切り型(一回きりの収益発生)のビジネスとは性質が異なります。
売り切り型のモデルでは、将来的に売れる確約がなく、「過去に実現した売り上げ」で語られることが多くなります。一方SaaSビジネスにおいては、契約が続く限りにおいては先々の収益が確約されることになるため、「その時点において、定常的な収益がどのくらいあるか」を示すRecurring Revenueという考えが用いられます。
サブスクリプションサービスという性質上、恒常的な収益を示すMRR(Monthly Recurring Revenue)もしくは、ARR(Annual Monthly Recurring Revenue:期末時点のMRRを12倍した数値)がSaaSビジネスの規模を図る上で最も重要といえます。
freeeも決算説明資料の冒頭、キースライドとしてARRを示しています。直近四半期ベースで85.5億円という水準に加え、前年同期比ベースで49%の伸びを遂げていることが分かります。成長著しいSaaS企業においては、このARRの絶対額、そして成長率がどのくらいの水準であるかという点に注目が集まります。
freee原さんの視点
実際に“モノ”があるようなビジネス(ライセンス売り切り型のソフトウェア等も含む)は、商品の受け渡しによって初めて売り上げが発生するため、基本的には過去を振り返ります。
一方で、SaaSは契約が継続する限り売り上げが計上され続けるため、将来受け取る売り上げの予見可能性が高いといえます。投資家は将来の成長に対し投資を行いますので、SaaSにおいては、会計上の売り上げの先行指標であるARRを基に議論をすることが基本となります。freeeの決算説明資料でも、主要KPIとして示しています。
関連記事
- SaaSはバックオフィスの何を変えるのか
バックオフィス業務を支える便利な道具に、SaaS(サース)がある。営業やマーケティングの分野が先行して導入が進んだが、ここにきてバックオフィスにもSaaSの活用は広がっている。SaaSを導入して効率化された企業もあれば、逆にうまく活用できずに生産性が下がってしまったという企業もある。その違いはどこにあるのか。 - マネーフォワードがSaaSビジネスのKPIを開示 19年11月決算
SaaSビジネスでは、顧客ごとに業績を分析するユニットエコノミスクを利用する。いったんユーザーを獲得すれば継続的に売り上げが生まれるSaaSモデルの特性から、企業全体の売り上げやコストというよりも、顧客あたりの、獲得費用、売上高(ARPA)、解約率(チャーンレート)によって事業を評価する仕組みだ。 - SaaS企業をアナリストが分析「企業データが使えるノート」公開
クラフトデータは11月20日、アナリストがSaaS企業のKPIデータや企業分析コンテンツを行う「企業データが使えるノート」を公開した。 - すべてのビジネスはサブスクへと向かう 専用の管理基盤Scalebaseを提供するアルプの狙い
昨今大流行のSaaSビジネスだが、その管理の裏側は相当に複雑化している。サブスクリプションビジネス専用の管理サービス「Scalebase」を提供するアルプは、すべてのビジネスがサブスク化することをにらみ、専用の管理プラットフォームをSaaSで提供する。 - freee上場 クラウド会計に続くビジョンを話す
クラウド会計ソフトを提供するfreeeが12月17日、東証マザーズに上場した。公開価格は2000円で、初値は2500円となり、時価総額は約1200億円。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.