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ソフトバンクも追随、価格破壊「20Gバイト月2980円」の携帯業界ウラ事情古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)

これまで国民・政府が求めてきた「携帯料金の値下げ」に、大手キャリアが舵を切り始めた。ドコモに続き、ソフトバンクも月額2980円で20Gバイトという価格設定を打ち出してきた。実は、ドコモがahamoのような価格破壊的な料金プランを発表する直前に、予備運動らしき行動を取っていたことをご存知だろうか。

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ソフトバンクはなぜ追えたのか

 一方で、ahamoの攻勢にうまく寄せてきたのがソフトバンクである。ソフトバンクは3社で最も遅い22日に、名称未定の「オンライン専用ブランド」をahamoと同じ21年3月にリリースすることを発表。20Gバイトで2980円と基本的な条件を揃えたうえで、LINEの通信データ量は「ノーカウント」とすることでahamoに対してエッジを持つかたちとなった。


ソフトバンクは「SoftBank on LINE」という形で、新料金プランを発表した

 ソフトバンクはなぜahamoを追従したプランをすぐに出せたのだろうか。ここも企業行動からある程度予兆があった。

 ソフトバンクも、思い返せばZホールディングスの誕生が携帯料金値下げの布石だったのではないだろうか。Zホールディングスはヤフー・ジャパンと、買収したLINEを傘下に持つ形になる予定だ。どちらも格安SIM事業を行っており、LINEは今回の20Gバイト2980円プランで、ahamoよりもプラスアルファの提供価値を生み出す立役者となった。

 次に、ドコモが先行でプランを出したこともあるだろう。通常、競争という観点では後にプランを発表する方が有利となりやすい。価格で勝負するのであれば先行の企業が提示した額を少しでも下回れば業界最安値となるし、質で勝負するのであれば先行の企業が提示した条件が確認できた方が付加価値もコントロールしやすいからだ。

 携帯子会社のソフトバンクは上場しているものの、ソフトバンク1社だけ価格を維持してしまえば、たちまち競争に敗北してしまう。外部株主としては「値下げに抗うことが自らの首を絞めてしまう」という環境になるのを待つことで、ソフトバンクから外部株主を締め出さずとも料金値下げに追従できたのではないだろうか。

年明け以降はau・楽天の動きに注目

 ここで苦しいのはauと楽天モバイル、そして格安SIM各社である。

 auは、ドコモとソフトバンクのプランを確認したうえで、来年3月までにもう一段の値下げプランを提示できなければ、本格的に“さよならau”の動きが加速してしまうリスクがある。

 そして来年3月は、楽天モバイルの”1年間無料”キャンペーンが、順次終了するタイミングでもある。ドコモ・ソフトバンクの提示したプランに加えて、各社が何らかの付加価値を持ったプランが年明けごろにリリースされるかが直近の焦点となってくるだろう。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

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