“熱狂なき価格上昇”のビットコイン、いち早く“バブル超え”を果たせた理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)
約3年前、ビットコインは“終わった”と思われていた。しかし、足下ではそんなビットコインバブルの最高値230万円台をさらに100万円以上も上回り、1BTC=382万円で推移している。しかし、今年のビットコイン相場では、17年末から18年初頭に見られたような熱狂がそこにはない。熱狂なき価格上昇により、ひっそりと高値を更新し続けている。
ビットコインの価値の裏付け
しかし、ビットコインの2020年初頭からの上昇率は、各国のマネーサプライの増加率をはるかに上回る約7倍だ。ここに価値の裏付けはあるのだろうか。
ビットコインに懐疑的な見方をする市場参加者は、仮想通貨をいわゆる“電子マネー”のいち累計とみなしている。つまり、「ビットコインはその価値を信じる者の信頼でのみ成り立っている通貨であり、裏付けとなる資産を持たない」というものだ。
しかしビットコインが「裏付けとなる資産を持たない」とは一概に言い切れない。通貨を作るために必要なコストという観点からいえば、ビットコインの場合は、マイニング(採掘)のために消費したコンピューターのリソースと消費した電力が裏付けとなるのだ。
通貨を作るために必要なコストという考え方は、金貨や銀貨といった、「それ自体が額面としての価値を有する貨幣」をはじめとして、大昔から用いられてきた。現代においても、「1万円の原価は21円で、1円の原価は2円」など、貨幣の持つ本質的な価値について言及される場面がよくあるだろう。
ここで、ビットコインを採掘する業者の損益分岐点はおよそ100万円程度であるといわれている。つまり足元の1ビットコインには本質的に100万円ほどの電力やCPUリソースが“結晶化”しており、これも価値の裏付け要因の1つにもなっているのだ。
逆にいえば、これを上回る残りの280万円部分の価値は、私たちが用いている現金と同じような「信用」であったり、今後もビットコインの採掘難度が高まり、製造原価が高まることを見越した「投資」であったり、これらの要因による価格上昇に乗じて短期で利益を狙う「投機」という要因によるものとみられている。
投機が価格の大部分を占めたタイミングが、3年前のようなバブルの頂点であるとすると、今回の価格上昇は未だ当時のような熱狂具合が見られない。その意味では、まだバブルとまではいえない状況とも思える。
ビットコインはバブル以降も研究開発が継続的に行われており、ライトニングネットワークといった新しい送金システムの実装が進んでいる。これによって、従来の問題点として指摘されてきた、送金手数料の高さや送金時間の遅さを改善することを目指し、通貨としての利便性を高めている。
また、通貨の供給という面で見ても、20年の5月には“半減期”と呼ばれるイベントをこなしている。これまでは1つのブロックをマイニングすれば12.5BTCを得られたが、20年5月以降は6.25BTCと半分になっている。市場に新たなビットコインが供給されにくくなっているのだ。
利用者の増加に伴うネットワーク効果の高まりと、新規供給の縮小という事情が、バブル後の最高値を正当化する要因となっている。
しかし、相場には「もうはまだなり、まだはもうなり」という言葉もある。「まだバブルではない」という意見が大勢を占めてきた時から、価格の動向は不透明になっていきそうだ。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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