民間企業が主導した、トランプ大統領「ネット追放劇」に見る“権限”とリスク:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
TwitterやFacebookがトランプ大統領のアカウントを次々と停止。民間企業が大統領の口封じをする権利があるのか、と議論になった。SNSのルール上、暴動につながる発信は許容できないようだ。ただ、サービス提供者が人々の生活や権利に及ぼす影響がますます大きくなっていることは知っておくべきだ。
Twitter「アカウント削除」の難しさ
また表現の自由に反するとの意見も米国では出ている。ちなみに日本でもトランプのアカウント凍結については、Twitterで「言論規制」「言論弾圧」などがトレンド入りしていた。
だが今回の件はそうした批判には当たらないだろう。
というのも、TwitterやFacebookを運営するのは民間企業であり、その企業が定めている規定に違反すれば利用を制限されるのは当然で、ルールを守れないならはじめから使うなということになる。
ただそれ以上に、米憲法などを持ち出して「言論の自由は死んだ」と批判する米保守派がいる。だが言論の自由を保障するアメリカ合衆国憲法修正第1条にも例外がある。今回のトランプ大統領が行った、差し迫った違法行為を扇動することはその例外に入る可能性が高い。
もっとも、Twitterでは、憲法うんぬんだけでアカウントが凍結されるようなことはないようだ。Twitter関係者が筆者に語ったところによれば、凍結の決断などは、その時々の社会情勢や雰囲気なども加味して考慮しなければいけないという方針のようで、アカウントの削除などはなかなか判断が難しいという。日本でも、言葉尻や言葉の本当の意図なども関わってくるために、例えば、ある言葉を拾って一概にツイートを制限することもできないらしい。日本人のTwitterユーザーでヘイトと思えるような発言を続けていてもアカウントが凍結されないのには、そういう背景がある。
トランプ陣営とSNSの間にはこれまでこうした攻防があったため、保守派たちは、大統領選直後あたりから、Twitterなどの警告に邪魔されない保守派のためのSNSに流れた。冒頭でも触れた「パーラー」だが、選挙後に急激にユーザー数を伸ばした。
筆者も当時、早速アカウントを作って利用を始めたが、トランプ支持者の陰謀論などがあふれかえっていた。「おすすめユーザー」も保守派や陰謀論者が並ぶ。そしてこのパーラーすら、1月6日の米議会襲撃の計画に使われたとして、アップルやグーグルがアプリをダウンロードできなくしてしまい、さらにサーバを提供していたアマゾンもサービスを停止。オンライン上から消えてしまった。これもまた物議を醸している。
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